商圏分析のやり方 店舗オーナーが使えるデータと実践手順
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商圏分析のやり方 店舗オーナーが使えるデータと実践手順

執筆: ローカルマーケティングパートナーズ 編集部

監修: 山本 貴大

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店舗の出店や集客を考えるうえで、自分の店にどんな人が来てくれるのか、周囲にどんな競合がいるのかを把握することは避けて通れません。その判断の土台となるのが商圏分析です。

商圏分析と聞くと、大手チェーンが専門ソフトを使って行うイメージがあるかもしれません。しかし、今は政府が提供する無料ツールだけでも十分に実践できます。この記事では、中小店舗のオーナーや出店検討者が自分で商圏分析を進めるための手順・使うデータ・業種別の判断基準を、実務の視点から整理しました。

商圏分析とは何か — 店舗経営での役割

商圏とは、自店舗に来店する可能性がある顧客が住んでいる地理的な範囲を指します。商圏分析は、その範囲内の人口・世帯構成・競合状況・消費動向などのデータを集めて「ここで商売が成り立つか」を定量的に判断する手法です。

エリアマーケティングと混同されることがありますが、両者は守備範囲が異なります。商圏分析は「エリアの特性を把握する」工程で、エリアマーケティングは「把握した情報をもとにどう販促するか」という実行工程です。商圏分析が前段にあり、その結果がエリアマーケティングの方針を決めるという関係にあたります。

商圏分析が使われる場面

商圏分析が経営判断に直結する場面は、大きく分けて4つあります。

  • 新規出店の候補地評価 — 「この場所で十分な来店が見込めるか」の裏付けを取る
  • 既存店の販促エリア最適化 — チラシ配布やWeb広告の配信地域を絞り込む
  • 撤退・移転判断 — 商圏環境の変化(人口減少、競合増加)を数値で捉える
  • 多店舗展開の優先順位づけ — 2号店・3号店の出店候補地を商圏ポテンシャルで順位づけする

「なんとなく」の判断が招くリスク

どの場面でも共通するのは、「感覚ではなくデータで判断する」という姿勢です。立地の良し悪しを肌感覚だけで決めると、見落としが生まれます。

駅前だから集客できると思ったが実は夜間人口が極端に少なかった。競合がいないから出店したが商圏人口自体が少なすぎた。家賃が安い物件を見つけたが前面道路の歩行者動線から外れていた。こうした「見れば防げた」失敗は、店舗ビジネスの現場で繰り返されています。

商圏分析に高額なシステムや専門知識は不要です。この記事で紹介する無料ツールと基本的な考え方を押さえるだけで、データに基づく立地判断が可能になります。

なお、大手チェーンが用いる高度な商圏分析(人流データ・AI予測モデル等)と、中小店舗が実践する商圏分析では、使うデータの粒度もコストも異なります。この記事では、予算をかけずに自分で実行できる範囲に絞って解説します。有料GISソフトや人流データサービスの導入は、まず無料ツールで基本を押さえたうえで検討しても遅くはありません。

商圏分析で使うデータの種類と入手先

商圏分析に必要なデータは大きく4つのカテゴリに分かれます。それぞれ入手方法が異なるため、整理して把握しておくと作業がスムーズです。

人口・世帯データ

商圏内にどれだけの人が住んでいるか、その世帯構成はどうかを把握する基礎データです。総務省の国勢調査をもとにしたe-Statや、jSTAT MAPで地図上に人口分布を重ねて確認できます。

見るべき指標は総人口だけではありません。年齢別人口(5歳刻み)、世帯数、世帯あたり人員数、単身世帯率なども分析対象です。たとえば学習塾を出すなら「5〜14歳人口」、高齢者向け整骨院なら「65歳以上人口」の密度が商圏の魅力度を左右します。

消費支出データ

商圏内の住民がどの分野にいくらお金を使っているかを示すデータです。総務省「家計調査」をもとにした都道府県別の消費支出データが利用可能です。

当社のエリアデータベースでは、業種ごとの1人あたり年間消費額を48都道府県分まとめています。たとえば外食費は東京都が全国1位で1人あたり年間約23万円、地方県では12万円台まで下がるなど、同じ業種でもエリアによる消費力の差は大きいです。出店先の消費水準を事前に確認しておくことで、売上見通しの精度が上がります。

競合データ

商圏内に同業の店舗がいくつあるか、その規模やポジションはどうかを把握します。Googleマップで業種名を検索すれば、商圏内の競合店舗数はおおよそ確認できます。

競合データを見るときのポイントは「数」だけでなく「密度」です。半径1km以内に飲食店が30店あっても、昼間人口が5万人いれば1店あたりの潜在顧客は十分に確保できます。逆に、競合が5店しかなくても商圏人口が3,000人なら過密状態です。店舗数÷商圏人口という「1店あたり人口」の指標で評価するのが実務的な判断方法です。

地理・交通データ

駅の乗降客数、幹線道路の交通量、バス路線、駐車場の有無など、来店の動線に関わるデータです。国土数値情報ダウンロードサイトや各鉄道会社の公開データから入手できます。

徒歩商圏(駅前・商店街)と車商圏(ロードサイド)では見るべき指標がまったく違います。

商圏タイプ主要指標データ入手先
徒歩商圏駅乗降客数、歩行者通行量、周辺施設の集客力鉄道会社公開データ、国交省不動産情報ライブラリ
車商圏前面道路の交通量、駐車場キャパシティ、幹線道路との接続道路交通センサス、Google Maps
複合商圏上記の両方 + バス路線、自転車圏内の居住人口jSTAT MAP + 交通データ

駅前商店街の物件なら乗降客数が生命線ですし、ロードサイドなら1日の交通量と右左折のしやすさが来店数を大きく左右します。商圏の性格に合った指標を選ぶことがデータ収集の効率を上げます。

業種別の商圏設定 — 距離と時間の目安

商圏の広さは業種によってまったく異なります。「半径○km」という画一的な基準はなく、業種の特性・来店頻度・競合状況に応じて設定する必要があります。

以下は主要業種の一般的な商圏設定の目安です。

業種一次商圏二次商圏主な来店手段来店頻度
コンビニ徒歩5分(約400m)徒歩10分(約800m)徒歩毎日〜週数回
飲食店(日常食)徒歩10分(約800m)自転車10分(約2km)徒歩・自転車週1〜月数回
美容室・サロン自転車10分(約2km)電車15分圏自転車・電車月1〜2回
フィットネスジム徒歩15分(約1.2km)自転車15分(約3km)徒歩・自転車週2〜3回
学習塾自転車10分(約2km)車15分(約5km)自転車・送迎週2〜3回
整骨院・クリニック徒歩15分(約1.2km)車10分(約3km)徒歩・車月1〜4回
車販売・リフォーム車20分(約8km)車30分(約15km)年数回

一次商圏は売上の60〜70%を占める核となるエリア、二次商圏は20〜30%を占める準主力エリアです。この比率は「商圏カバー率」として分析に使います。

ここで注意したいのは、上記の距離はあくまで出発点であり、実際の商圏は地形・交通・競合の立地で歪むということです。商圏を変形させる代表的な要因を整理しておきます。

  • 河川・鉄道による分断 — 直線距離では近くても、橋や踏切が少ないと心理的距離は遠くなる。自店と同じ側に住む人の来店率は対岸の2〜3倍になることも珍しくない
  • 幹線道路の壁効果 — 片側3車線以上の道路を渡る必要がある場合、歩行者の来店心理は大幅に下がる。車移動前提の業態ならむしろプラスに働く
  • 競合店の位置 — 自店より駅に近い場所に同業他社があれば、駅方面からの顧客は途中で取られる。商圏が「競合に削られた形」に歪む
  • 集客装置の有無 — 大型スーパーや商業施設が近接していると、その施設の集客力に乗って商圏が拡大する
  • 坂道・高低差 — 徒歩圏では坂の上り下りが来店の心理的ハードルになる。特に高齢者がターゲットの業態では、平坦なルートで来店できるかどうかが重要

こうした地理的な要因は地図だけでは判断できないため、現地で実際に歩いてみることが不可欠です。数値は仮説の出発点として使い、地理的要因を加味して補正するのが正しいアプローチです。

商圏分析の代表的な理論 — 知っておくと判断に深みが出る

商圏の範囲を定量的に推定するための理論がいくつか存在します。日常的に使う場面は限られますが、考え方を知っておくと「なぜこのエリアから来店があるのか(ないのか)」を論理的に説明できるようになります。

ライリーの小売引力の法則

2つの都市(商業集積地)の間にある地点の消費者が、どちらの都市に買い物に行くかを推定するモデルです。人口が大きい都市ほど引力が強く、距離が遠いほど引力が弱くなるという関係を数式化しています。

実務での使い道は、自店と競合店の間にいる見込み客がどちらに流れるかを大まかに推定する場面です。自店より大きい競合が近くにある場合、ライリーの法則に当てはめると商圏の境界線が自店寄りに縮小することがわかります。

ハフモデル

消費者が複数の商業施設の中からどの施設を選ぶかを確率で表すモデルです。施設の魅力度(売場面積や品揃えなど)と、消費者からの距離の2つの変数で来店確率を算出します。

ハフモデルの実務的な価値は「シェア」の概念を数値化できる点です。商圏内に競合が3店ある場合、自店のシェアは何%になるのか。売場面積を拡大したらシェアは何%上がるのか。この問いに対して定量的な推定を出せるため、大手チェーンの出店計画ではよく使われています。

個人店・中小規模であっても、「競合が近い場所に出店したら自店のシェアは下がる」「自店の魅力(専門性や接客品質)を上げれば、距離が遠くても来店動機が生まれる」という基本的な感覚を理論で裏付けられるのがハフモデルの利点です。数式を使いこなす必要はありませんが、考え方を知っておくと、競合出店時や自店リニューアル時の影響を論理的に説明できるようになります。

商圏分析の進め方 5ステップ

実際に商圏分析を進める手順を5つのステップで整理します。大手チェーンが使う高額GISソフトがなくても、無料ツールとGoogleマップで十分に実行可能です。

ステップ1 分析の目的を明確にする

「新規出店の候補地を3つに絞る」「既存店の販促エリアを見直す」など、商圏分析で何を判断したいのかを先に決めます。目的が曖昧だと、集めるデータの範囲も曖昧になり、分析が迷走します。

目的が「新規出店の立地判断」なら、候補地の人口・競合・交通データを横並びで比較する構成になります。「既存店の売上テコ入れ」なら、現在の顧客分布と商圏内の未開拓エリアを特定する方向に進みます。

ステップ2 商圏範囲を仮設定する

前章の業種別目安を参考に、一次商圏と二次商圏の範囲を仮で設定します。jSTAT MAPを使えば、指定した地点から半径○kmの円を描き、円内の人口・世帯数を自動で集計できます。

商圏の設定方法には大きく3つのアプローチがあります。

  • 距離圏方式 — 店舗から半径○kmの同心円で区切る方法。最も簡易的で、jSTAT MAPでそのまま実行可能
  • 時間圏方式 — 徒歩○分、車○分で到達できるエリアで区切る方法。実際の来店行動に近い形で商圏を定義できるが、道路ネットワークのデータが必要
  • 顧客分布方式 — 既存顧客の住所データをプロットし、売上の70%をカバーするエリアを一次商圏、90%をカバーするエリアを二次商圏と定義する方法。最も実態に即しているが、既存店でないと使えない

新規出店なら距離圏方式で仮設定し、開業後に顧客分布方式で精緻化するのが現実的な進め方です。

ステップ3 データを収集・整理する

前章で紹介した4カテゴリのデータを集めます。新規出店なら候補地ごとに同じ項目でデータを揃えると比較しやすくなります。

実務で使いやすい比較表のフォーマットは以下のとおりです。

項目候補地A候補地B候補地C
商圏人口(一次)
ターゲット層の人口
世帯数
競合店舗数
1店あたり人口
最寄駅の乗降客数
推定賃料

新規出店の候補地選定について、さらに詳しい評価フローは「出店エリアの選び方 BtoC店舗の立地判断に使う7つの統計データと評価フロー」で解説しています。

ステップ4 データを読み解き仮説を検証する

データが揃ったら、数値を見て仮説を検証します。ここが商圏分析の最も難しい工程です。

「商圏人口が多い=良い立地」とは限りません。人口が多くても競合が密集していれば1店あたりの取り分は小さくなります。逆に人口が少なくても競合がゼロなら独占できる可能性があります。

データの読み解きで重視すべき視点を3つ挙げます。

1つ目は、ターゲット層の密度です。総人口ではなく、自店の主要ターゲットとなる年齢層・世帯構成がどれだけ集中しているかを見ます。パーソナルジムなら20〜40代の就業者人口、学習塾なら小中学生の人口密度です。

2つ目は、競合対人口の比率です。商圏内の同業店舗数と、ターゲット人口を割り算した「1店あたりターゲット人口」で市場の余力を測ります。

3つ目は、消費性向との整合性です。商圏内の住民がその業種にいくら使っているかを消費支出データで確認します。人口は多いが消費支出が低い地域より、人口は少ないが1人あたり消費額が高い地域のほうが売上ポテンシャルは大きい場合があります。

ステップ5 結論を出し、行動に移す

分析結果をもとに「出店する/しない」「このエリアに販促を集中する」といった判断を下します。商圏分析はあくまで意思決定の材料であり、分析自体が目的ではありません。

判断に迷う場合は、現地に足を運んで確認するのが確実です。平日と休日、昼と夜で人通りはまったく変わります。データが示す数値と、現地の空気感にズレがないかを体感で確かめてから最終判断を下してください。

無料で使える商圏分析ツール

GISソフトを購入しなくても、政府系の無料ツールで商圏分析の基礎データはほぼ揃います。実務で使いやすい3つを紹介します。

jSTAT MAP(地図で見る統計)

総務省統計局が提供する地理情報システムです。任意の地点を中心に円を描き、その範囲内の人口・世帯数・年齢別人口を即座に集計できます。商圏分析の第一歩として最も使いやすいツールです。

使い方の手順は、まずjSTAT MAP(https://jstatmap.e-stat.go.jp/)にアクセスしてユーザー登録します。地図上で分析したい地点をクリックし、「リッチレポート」機能で半径を指定すれば、商圏内の統計データが自動でレポート化されます。人口ピラミッド、世帯構成比、昼夜間人口比なども一覧で確認でき、候補地比較にそのまま使えます。

RESAS(地域経済分析システム)

内閣府が運営する地域分析プラットフォームです。人口の将来推計、産業構成、消費動向、観光客の流動データなど、jSTAT MAPにはないマクロ視点のデータが充実しています。

出店エリアの将来性を判断するときに役立ちます。「今は人口が多いが10年後に大幅減少する地域」と「今は少ないが横ばいで推移する地域」では、投資回収の見通しがまったく変わります。RESAS(https://resas.go.jp/)の人口マップで将来推計を確認する習慣をつけておくと、中長期の判断力が上がります。

Googleマップ / Googleビジネスプロフィール

商圏内の競合店舗数と評価を手軽に把握できる最も身近なツールです。業種名で検索すれば、地図上に同業他社がプロットされます。口コミ数と評価点は競合の集客力を推し測る簡易指標になります。

自店のGoogleビジネスプロフィール(GBP)をすでに運用しているなら、「インサイト」画面で来店者の居住エリア(検索元の地域分布)を確認できます。これは実際の来店データに基づく商圏の実態値であり、机上の仮定より信頼性の高い情報です。

競合分析にもGoogleマップは有用です。商圏内の同業店を一通り確認し、各店の口コミ件数・評価点・投稿内容を読むと、競合の強み・弱みがある程度見えてきます。口コミ件数が多く評価が高い店舗は、その商圏での集客力が強い可能性が高いため、差別化の方向性を考える材料になります。

e-Stat(政府統計の総合窓口)

上記3ツールの背後にあるデータソースです。国勢調査・経済センサス・家計調査・住宅土地統計調査など、あらゆる政府統計のマイクロデータにアクセスできます。jSTAT MAPで地図にプロットする前に、e-Stat(https://www.e-stat.go.jp/)で元データの詳細を確認すると、分析の粒度を上げられます。

店舗のWeb集客全般については「店舗のSEO対策 地域検索から集客につなげるサイト設計の全体像」もあわせてご確認ください。

商圏分析でよくある失敗と対策

商圏分析の手法自体は難しくありませんが、データの読み方を間違えると判断を誤ります。支援現場で実際に見かける失敗パターンを3つ挙げます。

昼間人口と夜間人口を区別しない

オフィス街は昼間人口が多く見えますが、夜間や休日は人がいません。飲食店でもランチ業態なら有利ですが、ディナー業態なら不利です。国勢調査の「昼夜間人口比率」を確認し、自店の営業時間帯に合った人口を見てください。

東京都千代田区は昼間人口が夜間人口の約17倍、港区は約5倍です。逆にベッドタウンの埼玉県三郷市などは昼間人口が夜間人口を下回ります。営業時間帯にどれだけの人がいるかで商圏の価値は変わるため、「人口が多い」だけで判断すると実態と大きくズレます。

総人口だけで判断する

ターゲット層の構成比を無視して「人口が多いから出店する」と判断するケースです。たとえば高齢者比率が40%を超える商圏にキッズ向けスクールを出しても、ターゲット人口は限られます。年齢別の人口構成まで確認してから判断してください。

同様に、単身世帯比率が高い商圏でファミリー向け業態を出すのもミスマッチです。東京23区の都心部は単身世帯率50%超が珍しくありませんが、その数値を見ずに「人口が多い」だけで出店すると顧客獲得に苦労します。

競合を「同業種」だけで数える

美容室の商圏分析で美容室だけを数えるのは不十分です。ネイルサロン、まつエクサロンなど「顧客の美容予算を奪い合う」業態も広義の競合にあたります。フィットネスジムならヨガスタジオやピラティス教室、パーソナルジムも含めて「運動・健康投資の競合」として把握するのが実践的な見方です。

一度の分析で完結させる

商圏は固定されたものではなく、時間とともに変化します。新しいマンションが建てば人口構成が変わり、大型商業施設の閉鎖は人の流れを一変させます。出店時に一度だけ分析して「終わり」にすると、環境変化への対応が遅れます。後述する定期見直しの仕組みが不可欠です。

データだけで判断し、現地を見ない

数字上は好条件に見える立地でも、現地に行くと死角があるケースは少なくありません。空きテナントが目立つ商店街、治安に不安がある周辺環境、目の前の工事計画による長期の動線変化など、データに表れない情報は現地調査でしか拾えません。

既存店の商圏分析 — 定期見直しの進め方

商圏分析は出店時だけのものではありません。既存店舗でも定期的に商圏環境を見直すことで、販促の無駄を減らし、売上のテコ入れにつなげられます。

見直しのタイミング

半年に1回の定点観測を基本とし、以下のイベントが発生したら臨時で実施してください。

  • 商圏内に大型施設(ショッピングモール、病院、大学など)がオープンまたは閉鎖した
  • 商圏内に同業の競合が出店した、または撤退した
  • 主要道路の開通や駅の新設・廃止があった
  • 売上の傾向が3ヶ月以上にわたって変化している

既存店で見るべきデータ

新規出店の分析とは異なり、既存店では「自店の実データ」が使えるのが強みです。

1つ目は顧客データです。会員カードやPOSレジから、顧客の住所・来店頻度・客単価を集計します。来店顧客の住所をGoogleマイマップにプロットすれば、実際の商圏範囲が可視化できます。

2つ目は売上の地域別構成比です。商圏を4〜8の小エリアに分割し、エリアごとの売上構成比を算出します。売上が薄いエリアは「まだ取れていない」のか「そもそもポテンシャルがない」のかを判別し、販促の濃淡をつけます。

新規出店の商圏調査の詳しい手順は「新規出店の商圏調査 データで判断する立地選定の実務」で解説しています。

既存店の商圏分析チェックリスト

半年ごとの見直しで確認すべき項目をまとめます。

チェック項目確認方法判断基準
商圏人口の増減jSTAT MAPで前回と比較3%以上の増減があれば要分析
ターゲット層の構成変化年齢別人口の前年比ターゲット層が5%以上減少なら対策検討
競合の出退店Googleマップで定期確認1店あたり人口の変化を算出
顧客の来店範囲会員データのプロット更新一次商圏カバー率の変化を確認
売上のエリア別構成比POSデータと住所の紐付け構成比が10%以上変動したエリアに注目

見直し後のアクションにつなげる

見直しの結果は必ずアクションに落とし込んでください。

商圏人口が減少傾向なら、一次商圏の外への認知拡大(Google広告のローカル配信やSNS活用)を検討します。競合が増えて1店あたり人口が減っているなら、差別化ポイントの強化やターゲット層の見直しが必要です。

売上の地域別構成比が変化している場合は、販促資源の再配分を検討します。たとえば、これまでチラシを商圏全体に均等にまいていた場合、売上が取れているエリアに集中投下するだけで費用対効果が改善するケースがあります。

「分析して終わり」にしないことが、商圏分析を経営に活かすための前提条件です。分析結果をスプレッドシートに残し、半年後の次回見直し時に比較できる形にしておくと、変化のトレンドが見えやすくなります。

商圏分析の精度を上げるために

ここまで紹介した手法は、あくまで「机上の分析」です。商圏分析の精度を実務レベルまで引き上げるには、いくつかの補完作業が欠かせません。

現地調査を組み合わせる

データが示す数値と、現場の体感は必ずしも一致しません。平日と休日で人通りの量と客層が変わる商圏は多いです。候補地を絞り込んだら、実際に現地に足を運び、時間帯別の人通り・客層・競合店の入り具合を確認してください。

特に確認すべきは以下の点です。

  • 駅から候補地までの動線上に「人が立ち止まる場所」があるか
  • 前面道路の見通しと視認性(看板が通行者から見えるか)
  • 近隣に集客装置(スーパー、ドラッグストア、病院など)があるか
  • 駐車場の台数と回転状況(ロードサイドの場合)

複数の仮説を立てて検証する

「この場所は良い」と結論ありきで分析すると、都合の良いデータだけを拾ってしまいます。候補地ごとに「うまくいくシナリオ」と「うまくいかないシナリオ」の両方を描き、それぞれの根拠をデータで検証するのが堅実な進め方です。

たとえば「ターゲット人口が多いから売れる」という楽観シナリオに対して、「競合が3店あるので実質シェアは30%に留まる」という悲観シナリオを立てます。両方のシナリオで売上を試算し、悲観シナリオでも家賃と人件費を賄えるなら出店判断に値します。楽観シナリオでしか成立しない計画は、想定外の事態に対応できません。

分析結果を言語化して共有する

分析結果をデータの羅列で終わらせず、「この商圏を選ぶ理由」を文章で書き出してください。言語化する過程で論理の飛躍や見落としに気づくことが少なくありません。物件オーナーや金融機関への説明資料としても活用できます。

とくに融資を受けて出店する場合、事業計画書の「立地選定の根拠」セクションに商圏分析の結果を盛り込むと説得力が増します。「商圏人口○人、ターゲット層○人、競合○店、1店あたり人口○人」という数値に加えて、「このエリアを選んだ理由」を3〜5行で述べるだけで、計画書の完成度は上がります。

事業計画書への落とし込みについては「飲食店の事業計画書の書き方 審査を通すためのポイントと構成テンプレート」も参考にしてください。


商圏分析のご相談はローカルマーケティングパートナーズへ

店舗の出店計画やエリアマーケティング戦略の立案を、データ分析から施策実行まで一貫して支援しています。商圏分析の進め方や、分析結果をもとにした集客施策の設計について、お気軽にご相談ください。

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よくある質問

Q. 商圏分析は個人店でも必要ですか?

A. 必要です。むしろ1店舗で勝負する個人店ほど、商圏の人口構成や競合状況を把握しておくことが経営判断の精度に直結します。無料ツールで十分に実施できます。

Q. 商圏分析にかかる費用はどのくらいですか?

A. jSTAT MAPやRESAS、e-Statなど政府系ツールは無料で利用できます。有料GISソフトは月額数万円からですが、1店舗の出店判断なら無料ツールで十分対応可能です。

Q. 商圏の範囲はどう決めればよいですか?

A. 業種と立地条件で異なります。飲食店は徒歩10分圏(約800m)、学習塾は自転車15分圏(約3km)が目安です。既存店なら顧客の住所データから実際の来店範囲を割り出すのが確実です。

Q. 商圏分析はどのくらいの頻度で見直すべきですか?

A. 半年に1回の定期見直しが目安です。大型施設の開業・閉店、道路の開通、競合店の出退店など商圏環境が変化したタイミングでも臨時で実施してください。

Author / Supervisor

山本 貴大

監修

山本 貴大

代表取締役 / 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ

中央大学卒業。日系上場コンサルティング会社で3年勤務後、M&Aベンチャー執行役員を経て2022年に独立。BtoBマーケティング支援・FC加盟店開発・M&Aアドバイザリーを専門領域として、戦略設計から施策実行まで一気通貫で担う伴走型支援に取り組んでいる。

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