ユーザー会は、すでに自社の製品やサービスを使っている顧客に集まってもらい、活用ノウハウや事例を交換する場です。新規顧客を集めるセミナーとは目的が異なり、既存顧客との関係を深め、継続利用や事例・紹介の創出につなげる、既存顧客マーケティングの施策として位置づけられます。サブスクリプション型のサービスやカスタマーサクセスが広がる中で、解約を防ぎ、利用を広げる手段として取り組む企業もあります。
この記事では、ユーザー会の運営を、開催して終わりにせず事業成果につなげる視点で整理します。目的とKPIの設計、セミナーとの違い、開催形式、ターゲットとテーマの決め方、集客、当日のファシリテーション、開催後のフォローと継続運営、そして内製と運営代行の判断までを、担当者が動く順番で解説します。
イベント全般の運営の型はイベント運営の進め方ガイドにまとめており、この記事はその中でも既存顧客向けのユーザー会に絞って掘り下げます。
ユーザー会とは
ユーザー会とは、同じ製品やサービスを利用しているユーザーが集まり、活用方法や事例、課題への対処を共有し合うイベントを指します。
運営の形は、企業が主催するものからユーザー有志が主導するもの、常設のオンラインコミュニティ型まで幅がありますが、本記事では企業が既存顧客向けに主催するユーザー会を中心に扱います。参加者同士の横のつながりを生みながら、主催企業と顧客の関係も深める場です。
主催する企業にとっての狙いは、単なる交流にとどまりません。利用が定着していない顧客に活用のヒントを届けて定着を促す、要望や不満を直接聞いてサービス改善につなげる、熱量の高い顧客に事例や紹介の協力をお願いする、といった事業上の目的があります。
参加する顧客にとっても、他社の使い方を知る、同じ課題を持つ担当者とつながる、要望を作り手に直接届けられる、という価値があります。この双方の価値がかみ合い、改善を重ねるほど、ユーザー会は効果が積み上がりやすい施策になります。
ユーザー会がもたらすビジネス成果
ユーザー会を「顧客への感謝の場」で終わらせず、事業成果につなげるには、最初に何を得たいのかを明確にしておくことが欠かせません。ユーザー会が貢献しうる成果を整理します。
まず、継続利用の促進と解約の抑制です。活用が進んでいる顧客ほど継続しやすいかどうかは、自社の顧客データで活用度と継続率の関係を確認したうえで前提に置きます。
そのうえで、ユーザー会で他社の活用事例や応用的な使い方に触れてもらうことは、自社での活用の幅を広げ、サービスへの定着を後押しするきっかけになり得ます。
次に、アップセルやクロスセルの機会です。上位プランや別機能を使いこなす他社の事例を見ることで、参加者の中に「自社でも試したい」という関心が生まれることがあります。
さらに、事例化と紹介の創出です。満足度の高い顧客との接点は、導入事例への協力や、同業他社への紹介につながる機会になり得ます。
加えて、サービス改善につながる生の声を集められる点も、開発や運営の方針を決めるうえで価値があります。
ただし、これらはユーザー会を開けば自動的に得られるものではなく、目的に沿った設計と開催後の働きかけがあって初めて成果につながります。
これらの成果は、ユーザー会単体で完結するものではなく、カスタマーサクセスや営業の活動とつながって初めて売上や継続率に反映されます。ユーザー会で高まった関心や集めた声を、開催後に誰がどう引き継ぐかまで設計しておくことが、成果につなげる鍵になります。
ユーザー会に向いている事業と始めどき
ユーザー会は、どんな事業にも等しく効くわけではありません。取り組む前に、自社の事業やフェーズに合うかを見極めておくと、無理なく成果につなげられます。
向いているのは、継続的な取引が売上の土台になる事業です。サブスクリプション型のサービスや、契約更新が続く製品では、顧客に使い続けてもらうことが事業に直結するため、活用を後押しし関係を深めるユーザー会の効果が出やすくなります。
顧客の活用度が成果を左右する製品や、複数の顧客が共通の課題やテーマを持っている場合も、参加者同士の学び合いが生まれやすく、ユーザー会が機能します。
始めどきの目安は、事例や紹介を増やしたい、解約を抑えたい、といった既存顧客に関する課題が見えてきたタイミングです。ある程度の顧客基盤がたまり、カスタマーサクセスやコミュニティに人を割ける状態になっていると、運営を続けやすくなります。
逆に、顧客数がまだ少ない段階や、単発の取引が中心の事業では、無理に大きく始めるより、少人数の座談会のような小さな形から試し、手応えを見て広げていくほうが現実的です。最初から完成された大規模イベントを目指す必要はなく、小さく始めて育てる姿勢が、続くユーザー会につながります。
ユーザー会とセミナー・勉強会の違い
ユーザー会は、セミナーやウェビナー、勉強会と混同されがちですが、対象と目的が異なります。設計に入る前に違いを押さえておくと、狙いに合った場を作れます。
| 施策 | 主な対象 | 主な目的 | 情報の流れ |
|---|---|---|---|
| セミナー・ウェビナー | 新規の見込み顧客中心 | リード獲得・商談創出 | 主催者から参加者への一方向が中心 |
| 勉強会 | 特定テーマに関心がある層 | 知識・スキルの習得 | 講師から参加者への学習が中心 |
| ユーザー会 | 既存顧客 | 継続利用・事例/紹介・改善 | 参加者同士・主催者との双方向 |
セミナーにも既存顧客向けのものや双方向型、オンボーディング目的のものがあり、上の整理はあくまで一般的な傾向です。
そのうえで最も大きな違いは、ユーザー会が既存顧客を対象とし、参加者同士の双方向のやり取りを重視する点にあります。新規向けに設計されるセミナーが情報を届けて次の行動を促す場だとすれば、ユーザー会は関係を深め、顧客の声を引き出し、顧客同士をつなぐ場です。
この違いを理解しないまま、主催企業が一方的に話す時間ばかりの構成にすると、ユーザー会ならではの価値が生まれません。新規顧客向けのセミナー運営についてはBtoBセミナーの完全ガイドで整理しており、あわせて読むと施策の使い分けが見えてきます。
ユーザー会の開催形式
ユーザー会にも、オフライン、オンライン、ハイブリッドの形式があります。目的と参加者の状況に合わせて選びます。
| 形式 | 向いているケース | 運営の勘所 |
|---|---|---|
| オフライン(会場) | 深い交流・関係構築を重視する | 会場手配、当日運営、交流の時間の設計 |
| オンライン | 全国の顧客に参加してほしい | 配信環境、双方向のやり取りの工夫 |
| ハイブリッド | 会場と遠方の両方に届けたい | 会場班と配信班の連携、両参加者への配慮 |
オフラインは、参加者同士が直接顔を合わせるため関係が深まりやすく、懇親の時間を通じた事例収集や紹介の依頼もしやすい形式です。一方で会場費や当日の運営負荷はかかります。オンラインは全国の顧客が参加しやすくコストも抑えられますが、参加者が受け身になりやすいため、双方向のやり取りを引き出す工夫が要ります。
オンラインで定期的に接点を持ちながら、年に数回のオフライン開催で関係を深める、といった組み合わせで運営する企業もあります。形式ごとの運営の違いはイベント運営の進め方ガイドでも扱っています。
目的とKPIを設計する
ユーザー会は、参加者の声を反映して改善を重ねるほど効果が積み上がりやすい施策だからこそ、最初に目的とKPIを決め、回を重ねて改善できる状態にしておくことが大切です。目的が曖昧なまま開くと、参加者は楽しんだが事業には何も残らない、という結果になりがちです。
まず主目的を一つに定めます。初めて開催するなら、まずは認知を広げて参加の習慣を作ることを主目的にし、回を重ねてから継続率や事例創出といった成果指標に軸足を移す、という段階の踏み方が現実的です。目的が決まったら、達成度を測るKPIを段階的に置きます。
開催そのものの指標から事業成果の指標まで、次のように層を分けて考えると、ユーザー会が事業にどう効いているかを説明しやすくなります。
| 段階 | 見る指標の例 |
|---|---|
| 参加 | 申込数、参加率、初回参加の比率、満足度 |
| エンゲージメント | 発言や質問の数、参加者同士の交流、アンケート回答率 |
| 継続 | 参加者の再参加率、コミュニティへの定着 |
| 事業成果 | 参加者の継続率・解約率、アップセル、事例化・紹介の件数 |
参加の段階は、まず場が成立しているかを見る指標です。案内した顧客のうちどれだけが申し込み、参加したか、初めての参加者がどれだけいたかを追い、満足度とあわせて開催の質を確認します。エンゲージメントの段階は、参加者がどれだけ主体的に関わったかを見ます。
発言や質問の数、参加者同士が交流したか、アンケートに答えてくれたかは、ユーザー会らしい双方向の場になっていたかを映します。継続の段階では、同じ顧客が次回も参加してくれるか、開催の合間もコミュニティにとどまってくれるかを見ます。再参加してくれる顧客が増えるほど、ユーザー会は関係を深める場として機能しています。
事業成果の段階では、参加者と非参加者を比べると効果を捉えやすくなります。参加した顧客のほうが継続率が高い、解約が少ない、アップセルにつながった、事例や紹介に協力してくれた、といった差が一つの手がかりになります。相関として捉え、因果は慎重に判断します。ただし、そもそも活用度や関係の深い顧客ほど参加しやすいため、この比較は参考指標として扱い、契約期間や利用状況、担当との接点といった条件をそろえて見ることが必要です。
目標値は他社の数字をそのまま当てはめるのではなく、自社の顧客基盤と過去の実績に照らして設定します。KPIの考え方はセミナーのKPI測定も参考になります。
初開催から継続運営へ移る判断
初回から大規模なコミュニティを目指す必要はありません。開催段階ごとに確認する内容を変えると、参加者数だけで成否を判断せずに済みます。
| 段階 | 主な狙い | 運営で決めること | 次へ進む判断材料 |
|---|---|---|---|
| 初開催 | 参加者が求めるテーマを確かめる | 対象顧客、テーマ、発言しやすい進行 | 参加理由、満足、不足した内容 |
| 2〜3回目 | 再現できる型を作る | 案内方法、時間配分、担当、フォロー | 再参加、発言・交流、運営工数 |
| 継続運営 | 顧客同士の関係を育てる | 年間テーマ、顧客登壇、運営への参加 | 継続利用、事例・紹介、顧客の自発的な関与 |
継続の判断では、参加者が多かったかだけでなく、同じ顧客がまた参加したいと思ったか、参加者から次のテーマや登壇の申し出が出たかも確認します。運営側の工数が増え続ける場合は、開催頻度を上げる前に案内・申込・アンケート・記録の型を整えます。
ターゲットとテーマを設計する
誰を招き、何をテーマにするかは、ユーザー会の満足度を大きく左右します。目的に応じて、対象とする顧客を絞ります。
全ユーザーに広く呼びかける方法もあれば、活用度の高い顧客や、特定の業種・規模の顧客に絞る方法もあります。初回や、事例・紹介の創出を狙う回では、熱量が高く関係の深い顧客を優先的に招くと、場が活性化しやすくなります。
逆に、活用が進んでいない顧客の定着を狙うなら、その層に絞って基礎的な活用をテーマにする、という設計もあります。
テーマは、参加者が翌日から実務で使える具体性を持たせることが肝心です。抽象的な製品紹介ではなく、他社が実際にどう使って成果を出したか、つまずきをどう乗り越えたか、といった実践的な内容が喜ばれます。過去のアンケートで挙がった要望や、よく寄せられる質問をテーマに反映すると、参加者の関心とずれません。主催企業が話す時間だけでなく、参加者が事例を発表する枠や、参加者同士が意見を交わす時間を組み込むと、ユーザー会らしい双方向の場になります。
ユーザー会の代表的なプログラムの型
当日のプログラムは、目的と参加者の規模に合わせて型を選びます。代表的な型と、それぞれが向く狙いを整理します。一つの回で複数の型を組み合わせることもよくあります。
| 型 | 内容 | 向いている狙い |
|---|---|---|
| 事例発表・LT | 参加者や主催者が短い時間で活用事例を発表する | 活用のヒント共有、事例の掘り起こし |
| パネルディスカッション | 数名の顧客が登壇し、テーマに沿って議論する | 応用的な使い方や本音の共有 |
| ワークショップ | 参加者が手を動かして課題に取り組む | 活用スキルの底上げ、定着促進 |
| 座談会・グループ交流 | 少人数に分かれて意見や悩みを交換する | 関係構築、要望や不満の収集 |
初開催や活用の定着を狙う回では、事例発表やワークショップで具体的な使い方を届ける構成が向きます。関係を深めたい回や、要望を集めたい回では、座談会やパネルディスカッションで参加者が話す時間を厚くします。
一日の流れは、目的に応じて組み立てます。
たとえば、主催者からの簡単な最新情報の共有で場を温め、顧客による事例発表で具体を届け、グループでの交流や質疑で双方向のやり取りを生み、懇親の時間で関係を深める、という流れが一つの型です。
具体的な時間配分の一例として、90分で開くなら、最初の10分ほどで主催者からの案内、続く30分で顧客数名による事例発表、次の30分をグループでの交流や質疑にあて、残りの20分を懇親と個別の相談にあてる、といった組み立てが考えられます。規模やテーマに応じて、発表と交流の比重を調整します。
主催者が話す時間を短くし、参加者が話す時間や交流の時間を多く取るほど、ユーザー会らしい場になります。各プログラムの時間配分と担当を香盤表にまとめ、進行役と運営スタッフが同じ表を見て動ける状態にしておきます。
集客と申込の設計
ユーザー会は既存顧客が対象のため、新規セミナーのように広告で母数を広げるより、関係性を生かした個別の働きかけが効きます。
まず、目標とする参加者数を決め、そこから逆算して声をかける母数を見積もります。案内した顧客が全員参加するわけではないため、目標に対して余裕を持った数に働きかけます。招く相手は、目的に応じて選びます。
活用度の高い顧客を中心にするのか、定着を促したい層に絞るのかで、案内する顧客も届けるメッセージも変わります。
カスタマーサクセスや営業の担当から、対象の顧客へ個別に案内するのが基本です。日ごろやり取りしている担当者からの声かけは、一斉配信のメールより参加につながりやすくなります。あわせて、既存顧客向けのメールやコミュニティ、案内ページで告知し、申し込みの導線を用意します。
複数のチャネルを重ね、担当者からの個別の声かけを軸に、メールやコミュニティで補う形にすると、届く範囲と確度の両方を確保できます。
申し込みの際は、参加する価値をはっきり伝えることが大切です。他社の活用事例が聞ける、要望を直接届けられる、同じ課題を持つ担当者とつながれる、といった参加者にとっての意味を具体的に示すと、申込率の改善につながりやすくなります。
あわせて、開催日時や所要時間、オンラインか会場か、当日のおおまかな内容を明示すると、参加のハードルが下がります。
忙しい担当者でも予定を立てやすいよう、参加の負担が見通せる情報を添えます。開催の数週間前から案内を始め、締め切りに向けてリマインドを送ると、申し込みの山を作れます。
当日運営とファシリテーション
ユーザー会の当日は、主催者が一方的に話す場にしないことが最も重要です。参加者の発言や交流を引き出すファシリテーションが、満足度に大きく影響します。
進行役は、指揮者というより、参加者の声を拾い、話を広げるファシリテーターの役割を担います。参加者に問いを投げる、事例発表にコメントを添える、質問や意見を全体に共有する、といった働きかけで、双方向のやり取りを生みます。冒頭で参加者が発言しやすい雰囲気を作っておくと、その後のやり取りが活発になります。
簡単な自己紹介や、答えやすい問いかけから始めると、参加者の緊張がほぐれます。発言が特定の人に偏らないよう、静かな参加者にも話を振り、出てきた意見を否定せずに受け止めることも、安心して話せる場づくりにつながります。
沈黙が生まれたときは、無理に埋めようとせず、問いを言い換えたり、具体例を添えたりして考える手がかりを渡します。オンライン開催では、チャットに寄せられた声を進行役が拾って読み上げる、少人数のグループに分けて話す時間を設ける、といった工夫で受け身になりがちな参加者の関与を高めます。
交流の時間は、ユーザー会ならではの価値が生まれる場面です。参加者同士が自然に話せるよう、共通の話題やきっかけを用意し、近い課題を持つ人同士が話せるように橋渡しすると、関係づくりが進みます。
当日の進行は、香盤表(時系列の進行表)で組み立て、誰が何を担当するかを決めておきます。受付、進行、事例発表者のサポート、交流の場の運営、オンラインなら配信の操作と、持ち場ごとに担当を分けると、当日の混乱を防げます。
当日運営の段取りはイベント運営マニュアルの作り方でも詳しく扱っています。
開催後のフォローと継続運営
ユーザー会は、開催した後の対応が成果を大きく左右します。終わった直後に力尽きてしまうと、高まった関心も集めた声も、事業成果につながりません。
開催後はまず、参加者へのお礼と、当日の資料や録画の共有を早めに行います。アンケートで満足度や次回への要望を集め、当日に挙がった機能要望や不満は、開発や運営の担当に届けます。事例化や紹介に協力してもらえそうな顧客がいれば、温度感が高いうちに個別に声をかけます。営業やカスタマーサクセスと連携し、関心が高まった参加者へのフォローにつなげることも欠かせません。
そして、ユーザー会は一度きりで終わらせず、改善を重ねながら継続することで効果が積み上がりやすくなります。定期的に開催する、オンラインのコミュニティで開催の合間もつながりを保つ、参加者の中から発表者やリーダーを育てる、といった工夫で、回を重ねるごとに場が育っていきます。
特に、参加者の中から自発的に事例を話したり、他の参加者を助けたりする人が現れると、主催者が場を作り込まなくても価値が生まれるようになります。そうした熱量の高い参加者に、次回の登壇や運営への関わりを少しずつお願いしていくと、コミュニティとして自走に近づきます。
運営を続けるうちに工数が膨らみやすいため、案内やアンケートの仕組みを整え、運営の型をマニュアル化しておくと、負荷を抑えながら続けられます。
事例化と紹介につなげる進め方
ユーザー会は、導入事例や紹介を生み出す起点として大きな価値があります。ただし、場を設けただけで自然に集まるわけではなく、引き出す設計が要ります。既存顧客マーケティングの成果として事例や紹介につなげる進め方を整理します。
まず、当日の場を事例の下地として使います。顧客が自社の活用を発表する枠を設けると、その発表内容がそのまま導入事例の素材になります。座談会や質疑で語られた具体的な使い方や成果も、記録しておけば後で事例化の候補になります。当日に「良い話」が出た顧客は、事例や紹介の協力を得やすい相手です。
次に、温度感が高いうちに個別に打診します。ユーザー会で自社の活用を前向きに語ってくれた顧客や、他の参加者に積極的にアドバイスしていた顧客には、満足度が高まっている開催直後のタイミングで、導入事例への協力や同業他社への紹介を個別にお願いします。
時間が空くほど熱量は下がるため、開催後のフォローの中に事例・紹介の打診を組み込んでおきます。
そして、営業やカスタマーサクセスと連携します。ユーザー会は、担当者だけで完結させると事例化や紹介の機会を取りこぼします。当日に関心や意欲が高まった参加者の情報を営業やカスタマーサクセスに共有し、商談やアップセル、紹介の打診につなげる流れを、開催前から設計しておきます。誰がどの顧客をフォローするかを決めておくと、接点を成果に結びつけやすくなります。
ただし、事例化や紹介の依頼では、相手への配慮を欠かさないことが前提です。導入事例として公開する場合は、掲載の可否や社名を出す範囲、引用してよい内容を事前に個別で確認し、同意を得てから進めます。当日の発言や録画を後で使う可能性があるなら、その旨もあらかじめ伝えておきます。
紹介の依頼も、参加した目的を損なわない範囲で、相手の負担にならないように行います。ユーザー会は信頼が土台の場なので、成果を急ぐあまり売り込みが前面に出ると、かえって関係を損ないかねません。
ユーザー会でよくある失敗
ユーザー会には、繰り返し起こりがちなつまずきがあります。着手前に知っておくと、予防に手を打てます。
- 主催企業が一方的に話す場になる。製品紹介や自社の話ばかりになると、参加者にとっての価値が薄れます。双方向のやり取りと参加者同士の交流を軸に設計します。
- 目的とKPIを決めずに開く。楽しかったが事業には何も残らない、という結果になりがちです。最初に目的と測る指標を定めます。
- 一度きりで終わってしまう。単発の接点を継続的な関係につなげるには、開催後のフォローと次の接点の設計が必要です。定期開催や合間のつながりで継続性を持たせます。
- 集客を一斉配信だけに頼る。既存顧客には、担当者からの個別の声かけが効きます。関係性を生かした集客を組み合わせます。
- 開催後のフォローを設計していない。高まった関心や集めた声を放置すると、成果につながりません。誰がどう引き継ぐかを事前に決めます。
- 運営工数が増え続ける。手作業のまま回を重ねると、担当者が疲弊します。仕組み化とマニュアル化で負荷を抑えます。
内製と運営代行、どこを任せるか
ユーザー会は、すべてを自社で運営することも、一部または全部を運営代行に任せることもできます。既存顧客との関係づくりが目的だけに、企画や顧客とのコミュニケーションの根幹は自社が持ちたい一方、企画設計や集客、当日運営、開催後の事務作業には相応の工数がかかります。
そもそも内製と外注のどちらで進めるかの判断はイベント運営の進め方ガイドで整理しており、この記事は運営の負荷を外部の力で軽くする選択肢を前提に、任せ方を考えます。
よく取られるのは、顧客との関係やテーマの根幹は自社に残し、手のかかる実務を外部に出す切り分けです。企画の骨子や招く顧客の選定、当日の顔となる進行は自社が担い、集客の事務作業、申込管理、当日の運営オペレーション、開催後のアンケート集計やフォローの仕組みづくりを外部に任せる、という形です。
初めて開催する場合は、企画から伴走してもらい、運営の型を作りながら自社にノウハウを蓄えていく進め方もあります。
当社は、セミナーやイベントの企画設計から集客、当日の進行・運営、参加者フォローまでを一気通貫で支援するBPO型のサービスを提供しています。ユーザー会のように既存顧客との関係構築を狙うイベントでも、企画の設計と、当日を円滑に運ぶための運営実務の両方を社外の機能として活用できます。
運営事務局だけ、当日運営だけといった部分的な依頼にも対応していますので、社内のリソースに合わせて任せる範囲を選びたい場合は、BtoBイベント・セミナー運営の支援サービスをご覧ください。
ユーザー会を含むBtoBマーケティング全体の設計から相談したい場合は、BtoBマーケティング支援もあわせてご確認ください。
まとめ
ユーザー会の運営は、既存顧客との関係を深め、継続利用や事例・紹介の創出といった事業成果につなげる、既存顧客マーケティングの施策です。開催そのものを目的にせず、目的とKPIを段階的に設計し、参加者の双方向のやり取りを引き出す場を作り、開催後のフォローと継続運営で成果に結びつける、という流れで進めます。
新規顧客を集めるセミナーとは対象も目的も異なるぶん、既存顧客の関係性を生かした集客と、参加者を主役にする設計が成否を分けます。企画や顧客との関係の根幹は自社に残しつつ、手のかかる運営実務を外部の力で軽くできれば、担当者は本来注力すべき顧客との関係づくりに集中できます。
回を重ねるごとに育っていくのがユーザー会の強みなので、続けられる運営の形を最初から設計しておくことをおすすめします。