事業承継・M&A補助金は、中小企業の事業承継やM&Aを後押しするための国の補助金です。後継者への引き継ぎや、M&Aによる第三者への承継、その後の統合などに伴う費用の一部が補助されます。経営者の高齢化が進み、後継者不在の企業が増えるなか、円滑な承継やM&Aを支援する制度として整備されてきました。なお、この補助金はかつての事業承継・引継ぎ補助金を引き継ぐ形で再編された制度です。
この記事では、事業承継・M&A補助金を、複数の枠の考え方と申請の進め方という観点で整理します。補助率や上限額、公募の時期は年度ごとに見直されるため、本記事では制度の趣旨と枠の選び方を中心に解説し、具体的な金額や要件は最新の公募要領で確認する前提で進めます。
事業承継・M&A補助金の全体像
事業承継・M&A補助金は、一つの大きな枠組みのなかに、局面に応じた複数の枠が設けられているのが特徴です。事業を引き継ぐ側の取り組みを支援する枠、M&Aの専門家費用を対象とする枠、M&A後の統合を支援する枠、廃業や再チャレンジを支援する枠などがあります。自社が事業承継やM&Aのどの段階にあるかによって、使える枠が変わります。
この補助金が想定しているのは、単に事業を引き継ぐことだけではありません。承継やM&Aをきっかけに、新たな設備投資や販路開拓などの経営革新に取り組むこと、M&Aを専門家の支援を受けて円滑に進めること、買収後の統合を着実に行うことまでを視野に入れています。つまり、承継・M&Aの「前後」に必要となる費用を幅広く対象にしている点が、この制度の意義です。
中小企業にとって、事業承継やM&Aは数年に一度あるかないかの大きな経営判断です。費用負担も小さくありません。補助金を活用できれば、その負担を軽くしながら、専門家の支援を受けて円滑に進める後押しになります。だからこそ、自社の状況に合った枠を見極めることが、活用の出発点になります。
4つの枠の考え方と選び方
事業承継・M&A補助金は、局面に応じた枠に分かれています。枠の名称や構成は見直されることがあるため、最新の区分は公募要領で確認する前提で、ここでは考え方を整理します。
事業承継促進枠は、事業を引き継ぐ予定の後継者や引き継いだ後継者が、引き継ぐ経営資源を活かして新しい設備の導入や販路開拓といった取り組みを行う場合に活用を検討します。親族内承継や従業員への承継など、引き継ぐ前後で次の一手を打ちたい場面に向いています。
M&Aの専門家活用を支援する枠は、M&Aを進めるにあたって、仲介会社やフィナンシャルアドバイザー、デューデリジェンスなどの専門家を使う場合に活用を検討します。売り手・買い手のいずれの立場でも対象になり得るため、第三者への承継や買収を検討している企業にとって関わりの深い枠です。
M&A後の統合を支援する枠は、買収した後の経営統合、いわゆるPMIに取り組む場合に活用を検討します。M&Aは成立して終わりではなく、その後の統合がうまくいくかどうかが成否を分けます。統合の段階で必要になる取り組みを支援する枠です。M&A後の統合の考え方はM&AのPMI・経営統合もあわせて参考になります。
廃業・再チャレンジを支援する枠は、事業の一部を整理して再挑戦する場合などに活用を検討します。承継やM&Aと組み合わせて使うこともあり、引き継げない事業をどう扱うかという論点に関わります。自社がどの局面にあるかを整理し、対応する枠を選ぶことが、申請の第一歩です。
対象になる事業者と承継の形
事業承継・M&A補助金が主に対象とするのは、中小企業や小規模事業者です。具体的な対象者の要件は枠ごとに定められており、業種による規模の基準なども関わるため、自社が対象に含まれるかは公募要領で確認します。ここでは、どんな承継の形がこの補助金と関わるかを整理します。
事業承継には、大きく分けて親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)の3つの形があります。親族や従業員に引き継ぐ場合は、後継者が経営を引き継いだうえで新たな取り組みを行う局面が、補助の対象になり得ます。一方、後継者が社内にいない場合は、M&Aによって第三者へ引き継ぐ選択肢があり、その際の専門家費用や統合の取り組みが対象になり得ます。
重要なのは、自社がどの承継の形を選ぶかによって、関わる枠が変わるという点です。後継者不在に悩む企業がM&Aを検討するのか、後継者が決まっていて経営革新に取り組むのか、状況によって使える枠が異なります。まず自社の承継の方針を整理することが、補助金を考える前提になります。事業承継やM&Aの全体像は中小企業のM&Aガイドも参考になります。
申請の進め方
申請の大まかな流れは、自社の状況に合った枠の選定から始まり、要件の確認、必要書類の準備、電子申請、審査、交付決定、補助事業の実施、実績報告という順に進みます。枠ごとに対象者や対象経費、必要書類が異なるため、まずはその回の公募要領を読み込み、自社が要件を満たすかを確認することが欠かせません。
とくに注意したいのが、対象となる経費の範囲です。たとえばM&Aの専門家活用を支援する枠では、仲介手数料やアドバイザー費用、デューデリジェンスの費用などが対象になる場合がありますが、何がどこまで対象になるかは公募要領で細かく定められています。依頼を検討している専門家の費用が対象に含まれるかを、契約や着手の前に確認しておくことが重要です。
また、補助金は原則として後払いであり、交付決定を受ける前に支出したものは対象外になることが一般的です。スケジュールを誤ると、せっかくの取り組みが補助の対象にならないこともあります。承継やM&Aの進行と補助金の手続きのタイミングを合わせて計画することが、活用を成功させるうえで大切です。公募の時期は限られているため、最新の公募スケジュールを早めに確認しておきます。
補助金の活用とM&A・事業承継を一体で考える
事業承継・M&A補助金は、補助金だけを切り離して考えるものではありません。承継やM&Aをどう進めるかという本体の検討と一体で考えることで、はじめて有効に活用できます。どの枠が使えるかは、承継の形(親族内・従業員・第三者)やM&Aの段階によって変わるため、承継・M&Aの方針が固まっていないと、補助金の活用方針も定まりません。
たとえば、第三者へのM&Aを検討するなら専門家活用の枠が関わり、買収後の統合まで見据えるならPMIの枠も視野に入ります。後継者が決まっていて経営革新に取り組むなら、別の枠が中心になります。このように、自社の進む道筋と補助金の枠は密接につながっています。中小企業のM&A・事業承継の進め方そのものは中小企業のM&Aガイドで整理しており、補助金はその選択肢を支える手段の一つと位置づけられます。
売り手と買い手では、補助金の関わり方も変わります。売り手として事業を譲渡する側は、M&Aを円滑に進めるための専門家費用などが関わり、買い手として事業を引き継ぐ側は、買収後の統合や経営革新の取り組みが関わります。自社がどちらの立場でM&Aに臨むかによって、見るべき枠や準備する計画の中身が変わるため、立場を踏まえて検討します。買収後の統合を成功させる視点はM&AのPMI・経営統合で詳しく整理しています。
専門家に相談する際も、補助金の手続きだけでなく、承継やM&Aの戦略から一緒に考えられる相手を選ぶと、枠の選定やスケジュールの設計がスムーズになります。補助金の活用は目的ではなく、円滑な承継・M&Aを実現するための手段だという視点を持つことが大切です。補助金があるからM&Aを決めるのではなく、自社にとって必要な承継・M&Aを進めるうえで、使える補助金があれば活用するという順序で考えます。
申請時の注意点
補助金の申請にあたっては、いくつか留意すべき点があります。まず、補助率や補助上限額、対象経費、公募スケジュールは年度や枠によって変わり、見直されることがあります。本記事の内容は制度の考え方を示すものであり、具体的な金額や要件は必ずその回の公募要領で確認してください。
次に、補助金は申請すれば必ず受けられるものではなく、審査を経て採択される仕組みです。事業計画の内容が評価されるため、なぜその承継・M&Aに取り組むのか、それによってどう事業を発展させるのかを、説得力をもって示す必要があります。形式的に要件を満たすだけでなく、計画の中身が問われます。
そして、補助金の手続きや事業計画の作成を支援する専門家を選ぶ際は、その支援内容と費用の範囲を事前に確認しておくことが大切です。なお、申請書類など申請内容の作成を第三者に依頼する場合は、行政書士または行政書士法人に限られます。事業承継やM&Aは専門性が高く、補助金の要件も複雑なため、信頼できる専門家と進めることが、結果的に円滑な活用につながります。当社では、M&A・事業承継の方針整理や補助金活用の検討についてご相談いただけます。
事業承継・M&A補助金の活用や、M&A・事業承継のご相談はローカルマーケティングパートナーズへ
どの枠が自社に合うかの整理から、承継・M&Aの進め方、補助金活用を見据えたスケジュール設計まで、中小企業の事業承継とM&Aを支援します。具体的な金額や要件は最新の公募要領をご確認のうえ、進め方を一緒に検討します。