店舗・FCを展開する企業の経営者から、ここ1〜2年で同じ相談を受ける頻度が増えています。
「マーケから一緒に立ち上げてくれる共同創業型のパートナーはいないか」
新規業態の立ち上げ、エリア出店の加速、加盟店開発の仕組み化を、外部のコンサルに月額で頼むのではなく、リスクを部分共有しながら一緒に走ってくれるパートナーを探しているという相談です。私たちLMPでも、こうした共同創業型の関わり方を新しいサービスとして設計できないか検討を始めました。
設計の前にまず市場を理解する必要があったので、国内外で似たモデルを展開している企業を35社超洗い出して調査しました。結果として見えたのは、店舗・FC領域には共同創業×レベニューシェア型の支援パートナーがほぼ存在しないという空白でした。本記事では、その空白がなぜ生まれているのか、構造を整理します。
- 店舗・FC企業向けの既存の選択肢は「コンサル」「自己運営」「PE投資」の三択に限られている
- D2C領域で成立したレベニューシェア型マーケ支援(ブリーチなど)は、そのまま店舗に移植できない構造的な理由がある
- 大手向けJV型新規事業共創(Relic、quantum、BCG Digital Ventures)は中堅店舗フェーズに降りてこない
- 35社調査で「店舗特化×JV共同創業×マーケ実行×レベニューシェア」の4条件が重なる空白地帯が確認できた
経営者の困りごとはどこにあるのか
具体的にどんな相談かをもう少し書きます。
業態Aで5店舗まで黒字化できた企業が、新業態Bを立ち上げてエリアを変えながら3年で20店舗まで広げたい、というケースが多いです。本部にはマーケティング担当が1〜2名、加盟店開発担当が0〜1名。経営層は店舗オペレーションと既存業態の改善で手一杯で、新業態の立ち上げに時間を割けません。
採れる選択肢はおおむね3つです。
1つめは、外部コンサルに月額数十万円〜百万円で発注する。船井総合研究所の10ヶ月プログラム、アクアネットの30年蓄積、CREPRO・SHARELIVEなどのハンズオン型。知見は手に入りますが、施策の実行は自社でやる必要があり、人的リソースのボトルネックは解消されません。
2つめは、メガフランチャイジー(JFLAホールディングス、フジタコーポレーション、G-7ホールディングスなど)にFC加盟して運営してもらう。ただしこれは「自社ブランドを誰かに任せる」方向で、共同創業とは逆の構造です。
3つめは、PEファンド(ABF Capital、あおぞら企業投資、ニューホライズンキャピタルなど)から出資を受ける。投資額は数億円〜数十億円のレンジが中心で、1号店〜10店舗フェーズの案件サイズではマッチしません。
要するに、月額コンサルは知見だけで実行が伴わない、メガFCは方向が逆、PEは規模が大きすぎる。中堅成長フェーズの店舗・FC企業が「マーケから実行まで一緒にやってくれる共同創業型のパートナー」を探すと、選択肢がほぼないのです。
D2C領域では完成しているレベニューシェア型
一方、D2C・EC領域では「共同創業に近い深いコミット」を成果報酬で提供する会社が既に上場規模で確立しています。代表例が株式会社ブリーチ(東証グロース、9162)です。
ブリーチのモデルはシンプルで、商品の広告費をブリーチ側が肩代わりし、新規ユーザー獲得が発生した分だけレベニューシェアを受領します。クライアントの初期費用と最低保証はゼロ。マーケ戦略の策定から広告制作、運用、LP設計までブリーチ側で内製化しています。
このモデルで売上146億円(23年6月期、前期比79%増)、営業利益CAGR 90%という急成長を実現し、東証グロースに上場しました。同様のレベシェア型を展開するピアラ(東証グロース、7044)も売上157億円規模に成長しています。
ブリーチが成立している条件を分解すると、以下が見えてきます。
LTVが計算できる商材であること。ブリーチが扱うのは化粧品・機能性食品・健康食品など、定期コース前提の単品リピート通販。初回CPAは2〜3回目で回収でき、4回目以降が利益という構造です。LTVの予測精度が高く、レベシェアの計算ロジックが組めます。
マーケ機能を完全内製化していること。広告代理店を間に挟むと中抜きで利幅が消えます。ブリーチは戦略・制作・運用を全部内製化することで、レベシェアの利益率を確保しています。
広告費先行投資を支える資金力があること。ブリーチは46億円の融資枠で運転資金を回しています。広告費は支援側が立て替え、売上が立ってから回収する構造なので、キャッシュフローを支える信用力が生命線です。
このモデルは美しいのですが、リスクも顕在化しています。ブリーチ自身が26年6月期2Q累計で経常利益マイナス700万円の赤字に転落しました。新規商材の立ち上げ遅れが原因です。ピアラも売上157億円に対して営業利益0.4億円と利益率が薄く、コミット型の構造的な利幅の薄さを示しています。
なぜD2Cレベシェアがそのまま店舗に移植できないのか
「ブリーチのモデルを店舗・FC領域でやればいいのではないか」と最初は考えました。実際に設計を進めると、複数の構造的な障壁にぶつかります。
レベニューシェアの原資が違います。D2Cの場合、広告費を肩代わりすればオンライン売上が立ち、その売上からシェアできます。店舗の場合、家賃・人件費・在庫・初期投資など固定費が大きく、広告費を肩代わりするだけでは事業が回りません。新規出店時の集客や販促だけにコミットするのか、既存売上もシェア対象にするのか、原資の定義から再設計が必要です。
LTVの計算が難しい。D2Cの定期コースはLTVの予測精度が高いのですが、店舗の来店頻度・客単価・離脱率はばらつきが大きく、業態によってはLTVがほぼ読めません。リピート率の高い業態(飲食定期、サブスク型フィットネス、整骨院回数券など)に絞らないと、レベシェアの計算が破綻します。
広告費の規模感が違います。D2Cでは月数千万円〜数億円の広告費を支援側が肩代わりします。店舗の場合、1店舗あたりの月次集客広告費は10〜100万円程度が中心で、複数店舗をまとめて運用しないと事業として成り立つボリュームになりません。FC本部単位で複数店舗の広告を一括運用する設計が必要です。
オペレーションへの介入範囲が違います。D2Cでは広告・LP・CRMの改善がそのまま売上に直結します。店舗の場合、接客・商品力・立地が売上の主要因で、マーケ改善だけでは売上は伸びません。接客オペや在庫管理、スタッフ教育まで踏み込むBPO型に拡張する必要があります。
契約期間の設計も難しい。ブリーチ型は最低契約期間なしの個別商材契約ですが、店舗は出店から投資回収まで2〜3年かかります。短期解約されると広告投資が回収できないので、最低契約期間36ヶ月や中途解約時の広告費買取条項など、別ロジックが必要です。
D2Cで成立したモデルをそのまま店舗に移植するのは無理筋で、店舗・FC領域に最適化した別の契約スキームを設計する必要があるという結論になりました。
大手向けJV型新規事業共創は中堅店舗フェーズに降りてこない
もう一方の先行領域として、大手企業向けにJV型で新規事業を立ち上げる会社群があります。Relic(事業共創、4,000社・2万事業関与)、博報堂のquantum(共同創業100社超)とHakuhodo JV Studio(3年で30社のJV設立目標)、SUNDRED(100の新産業共創)、外資のBCG Digital Ventures(200事業ローンチ)あたりが代表的なプレイヤーです。
調査で分かったのは、これらの会社は対象領域がDX・SaaS・D2C・ヘルスケア・産業横断に集中しており、店舗・FC・エリアマーケに特化したプレイヤーは不在ということでした。
理由を考えると、こうなります。広告代理店系(博報堂・電通)はマス広告とブランディングが軸足にあり、店舗オペレーションやFC展開の実装知見は薄い。コンサル系(BCG Digital Ventures、アクセンチュア ソング、Ridgelinez)は超大手企業向けの大型フィー型が中心で、年間数億円のプロジェクトフィーが標準。中堅店舗企業の予算では届きません。独立系スタジオ(Relic、quantum、SUNDRED)は領域横断型で、特定業界の実装ノウハウは持ちません。
つまり、大手向けJV型新規事業共創の市場は形成されているのですが、その市場が見ているのは大手企業の新規事業部門であって、中堅店舗企業の新業態立ち上げではないのです。プレイヤーがいないというより、ターゲットが違う。
35社調査で見えた市場マップ
国内外35社超を「関与深度」と「領域特化度」の2軸で整理すると、4つの象限に既存プレイヤーが分かれます。
左下の汎用×フィー型には船井総研、アクアネット、Kernel、SHARELIVEなどFC本部構築コンサル群、ゼンリンマーケティングソリューションズなどエリアマーケGISベンダーが密集します。月額顧問または単発プロジェクトで知見を提供する形態で、成果コミットはありません。
左上の汎用×成果連動型には、ABF Capital、あおぞら企業投資、ニューホライズンキャピタルなど飲食・店舗領域のPEファンド、G-FACTORYなど店舗運営会社が並びます。エクイティ投資やサブリースで部分的にリスク共有はしますが、マーケ実行までは担いません。
右下の領域特化×フィー型は、業態別の店舗集客コンサルや一部のSaaS型サービス(favy、toypoなど)が該当します。月額課金型で成果コミットはありません。
右上の領域特化×成果連動型は、ほぼ空白です。Relic、quantum、Hakuhodo JV Studio、BCG Digital Venturesといった大手向けJVスタジオはここに該当する可能性がありますが、対象が大手企業のDX・SaaS新規事業に偏っており、店舗・FC・エリアマーケ特化のプレイヤーは確認できませんでした。
海外を見ても、Idealab、Rocket Internet、Atomic、High Alpha、Betaworks、eFoundersなどの自前スタジオはほぼデジタル・SaaS特化です。BCG Digital VenturesとMach49は大企業JV型ですが、リアル店舗・FCに特化はしていません。C3(マルチブランド・ゴーストキッチン運営、40超ブランド)、CloudKitchens、Harry’s Labsなど店舗・リアル特化のスタジオも存在しますが、いずれもマルチブランドホルダーや不動産プラットフォームの形であって、外部クライアントの新業態を共同創業する形ではありません。
「リアル店舗・FC×エリアマーケ×共同創業×レベニューシェア」の4条件交差は、グローバルで見てもほぼ前例がない空白地帯です。
空白を埋めるサービス設計の論点
LMPがこの空白を埋めるとして、設計の骨子を整理しておきます。先行事例から学んだリスクを織り込みつつ、現実的に成立する設計を考えました。
3段階の関与深度に分けるのが現実解と判断しています。
Stage 1は社外マーケ部としての関与で、月額フィー+成果連動ボーナスで運営委託を受けます。クライアント全体に提供する基本形態で、ここでフィー収益を確保します。
Stage 2は事業共創パートナーとしての関与で、Stage 1で実績が出たクライアントと、マイルストン報酬+売上連動レベニューシェアの契約に進化させます。広告費の一部を支援側で立て替えるケースもありますが、ブリーチ型の完全肩代わりは資金リスクが大きすぎるため避けます。
Stage 3は共同創業JVとしての関与で、Stage 2で事業性が確認できた案件のみ資本参加してJVを設立します。LMP側の出資比率は15〜30%程度を想定し、持分配当と中長期の事業価値創出を狙います。
Relicが「JVを子会社化して長期育成」というゼブラ型を採っているのは、この長期回収の設計と整合的です。eFoundersの「12〜18ヶ月の第三共同創業者」モデルもStage 2の関与期間として参考にできます。
差別化の軸は5つあります。
中堅企業×店舗/FC領域への特化。大手向けJVスタジオが降りてこない1〜10店舗フェーズに集中します。
セミナー支援BPOの組み込み。LMPの主力事業であるセミナー支援BPOを、加盟店開発リードの獲得エンジンとしてJV側で稼働させます。FC本部にとって加盟店開発は最大のボトルネックで、ここを内製で持つことは他社にない固有の強みになります。
エリアDB(自社データアセット)の活用。当社が公開しているエリアマーケティングDBを、出店候補地の意思決定支援として共同事業に組み込みます。
ハイブリッド契約設計。フィー+マイルストン報酬+売上レベニューシェアの3層構造で、レベシェア単独のキャッシュリスクを抑えつつ成果連動の動機づけを残します。
3段階の進化モデル。Stage 1〜3を明示することで、クライアントとの関係を深めながら段階的にコミット深度を上げていきます。
残るリスクと検証事項
設計の方向性は見えましたが、実装に向けては検証が必要な論点が残っています。
キャッシュモデルが持つかという問題。Stage 2・3の案件が増えるとレベシェア収益化までのタイムラグが長くなり、Stage 1のフィー収益で支えきれなくなる可能性があります。融資枠の確保や、外部資本の導入時期を事前に設計する必要があります。
人材モデルの設計。マーケ実行を内製すると人件費が重くなります。業務委託ネットワークと正社員の比率、Stage別の人員配置、JV出向の運用ルールなど、組織設計を詰めることが立ち上げ条件です。
レベシェア契約の初期テンプレート。売上の何%を何年シェアするか、途中解約時の精算ロジック、広告費の前払い精算、最低保証の有無といった契約条項は、初期に3パターンほど用意して、案件ごとにカスタマイズできるようにする必要があります。
レベニューシェアは支援する側にも事業選定眼を求めます。「売れる見込みのある事業だけ選ぶ」審美眼が利益率を決めるという、ブリーチがレベシェア事業で学んだ教訓は、店舗領域でも同じはずです。事業立ち上げの初期診断プロセスを徹底することが、低利益率に陥らない条件になります。
経営者へのメッセージ
店舗・FC事業を成長フェーズに乗せたい経営者にとって、外部パートナー選びは「コンサル・運営委託・PE投資」の三択から選ぶしかない時代でした。共同創業型・レベニューシェア型・マーケ実行同梱という第四の選択肢は、市場としてまだ形成されていません。
私たちLMPは、この空白を埋めるサービスを設計しています。中堅成長フェーズの店舗・FC企業に対して、加盟店開発・新業態立ち上げ・エリア展開の加速をマーケから一緒に走るパートナーとして、Stage 1〜3の段階的な共同創業モデルを提供する構想です。
新業態の立ち上げや既存ブランドのエリア展開の加速で、外部パートナーの関わり方に違和感を持っている経営者の方は、一度ご相談ください。サービス設計のフェーズなので、初期パートナーとして一緒に契約スキームを設計してくださる企業を探しています。
フランチャイズ・店舗事業のマーケティング支援 や 新規事業立ち上げ支援 のサービスページもあわせてご覧ください。