創業融資の受け方|日本政策金融公庫の申請手順・審査のポイント・業種別の資金計画
開業

創業融資の受け方|日本政策金融公庫の申請手順・審査のポイント・業種別の資金計画

執筆: ローカルマーケティングパートナーズ 編集部

監修: 山本 貴大

SHARE

「開業を決めたはいいが、資金をどう調達すればいいかわからない」。創業融資の受け方に関する疑問は、飲食・美容・クリニック・介護といった業種を問わず、開業準備で最初にぶつかる壁です。

2024年4月、日本政策金融公庫の創業融資制度は大幅にリニューアルされました。旧「新創業融資制度」は廃止され、新たに「新規開業・スタートアップ支援資金」に一本化。自己資金要件の撤廃や返済期間の延長など、開業者にとってプラスの変更が多い一方で、「何がどう変わったのか」が整理しにくい状態になっています。

この記事では、創業融資の全体像を日本政策金融公庫の制度を中心に整理します。申請の流れ、審査で評価されるポイント、事業計画書の組み立て方、業種ごとの資金計画の考え方、さらに補助金との組み合わせ方まで。これから開業する方が「何を・いつまでに・どの順番で」動けばいいかを明確にすることを目的に書きました。

創業融資とは何か 日本政策金融公庫を中心に理解する

創業融資とは、事業を新たに始める人、または開業してから間もない事業者が利用できる融資制度の総称です。代表的な資金調達先として、日本政策金融公庫(以下「公庫」)、都道府県の制度融資、市区町村の制度融資の3つがあります。

日本政策金融公庫の創業融資

公庫は政府系金融機関で、創業者向け融資の最も一般的な窓口です。民間銀行と異なり、実績のない創業者にも融資する制度設計になっています。

2024年4月の制度改正後、創業者向けの主要制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」に統合されました。主な融資条件を整理します。

項目内容
対象者新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間設備資金20年以内、運転資金10年以内(据置期間含む)
担保・保証人原則不要(条件により無担保・無保証人)
金利基準利率 年3.0〜4.5%(2025年12月時点)、条件該当で0.65%引下げ

都道府県・市区町村の制度融資

都道府県や市区町村が信用保証協会と連携して行う制度融資も創業者の選択肢になります。公庫と比べて金利が低い(1%台のケースもある)反面、信用保証料が別途かかる、審査期間が長い(2〜3ヶ月)、自治体によって条件が大きく異なるといった特徴があります。

東京都の場合、「創業融資」として融資限度額3,500万円、利率1.5%〜2.2%(責任共有対象外)の制度を用意しています。創業前の方も対象で、各区市町村にも独自の上乗せ補助が設けられていることがあります。

公庫と制度融資は併用可能。設備資金を公庫で、運転資金を制度融資で調達するといった使い分けも実務上よく見られるパターンです。

2024年の制度改正で何が変わったか

旧「新創業融資制度」から「新規開業・スタートアップ支援資金」への移行で、大きく4つの変更がありました。

自己資金要件の撤廃

旧制度では「創業資金総額の10分の1以上」の自己資金が必要でした。新制度ではこの要件が撤廃されています。制度上は自己資金ゼロでも申込み可能です。

ただし、自己資金要件の「撤廃」と「審査で評価されない」は別の話です。自己資金が少ない場合、融資額が減額される可能性は残ります。この点は審査のセクションで詳しく解説します。

返済期間の延長

運転資金の返済期間が7年から10年に延長されました。月々の返済額が抑えられるため、開業初期のキャッシュフロー負担が軽減されます。

金利の引下げ

創業者向けに一律0.65%の金利引下げが適用されます。女性・35歳未満・55歳以上の方はさらに優遇金利の対象になります。

融資限度額の引上げ

3,000万円から7,200万円に引き上げられました。設備投資が大きい業種(クリニック、介護施設など)でも公庫一本でカバーできるケースが増えています。

項目旧制度(〜2024年3月)新制度(2024年4月〜)
自己資金要件総額の1/10以上なし(撤廃)
融資限度額3,000万円7,200万円
返済期間(運転資金)7年以内10年以内
返済期間(設備資金)15年以内20年以内
金利引下げなし創業者は0.65%引下げ
担保・保証人条件付きで不要原則不要

創業融資の申請手順

公庫の創業融資を受けるまでの流れを時系列で整理します。

ステップ1 事業計画書の作成

公庫の「創業計画書」テンプレートをダウンロードし、記入します。テンプレートは公庫のWebサイトで業種別に公開されています(飲食業、理美容業、医療業など)。

記入項目は「創業の動機」「経営者の略歴等」「取扱商品・サービス」「取引先・取引関係等」「従業員」「お借入の状況」「必要な資金と調達方法」「事業の見通し」の8セクションです。

このうち「必要な資金と調達方法」と「事業の見通し」が審査の核心になります。根拠のある数字を入れられるかどうかが合否を分けます。事業計画書の書き方は次のセクションで詳しく解説します。

ステップ2 必要書類の準備

創業計画書に加えて、以下の書類を用意します。

  • 本人確認書類(運転免許証またはマイナンバーカード)
  • 直近2期分の確定申告書(個人事業主の場合)
  • 通帳コピー(自己資金の根拠資料として6ヶ月分)
  • 物件の賃貸借契約書(締結済みまたは仮契約書)
  • 設備の見積書(内装工事、厨房機器、医療機器等)
  • 許認可証のコピー(飲食業の場合は食品衛生責任者など)
  • 法人の場合は登記簿謄本

ステップ3 申込み

公庫への申込みはオンライン(「国民生活事業 インターネット申込」)または最寄りの支店窓口で行えます。事業資金相談ダイヤル(0120-154-505)で事前相談も可能です。

スタートアップサポートプラザ(東京・名古屋・大阪・福岡)では、創業前の相談に特化した専門スタッフが対応しています。初めての融資で不安がある場合は、まず電話またはオンラインで相談予約を入れるのが確実です。

ステップ4 面談

申込みから1〜2週間で面談日程が設定されます。面談は公庫の支店で行われ、所要時間は1〜2時間程度です。

面談で聞かれるのは、事業計画書に書いた内容の深掘りです。「なぜこの売上予測になるのか」「競合と比べた強みは何か」「経験・スキルの裏付けは何か」といった質問に、口頭で答えられるよう準備してください。

面談後、担当者が事業所予定地を訪問するケースもあります(現地調査)。

ステップ5 審査・結果通知

面談後1〜2週間で融資の可否が通知されます。承認の場合は融資条件(金額・金利・返済期間)が提示されます。希望額の満額が出ないケースもあり、その場合は減額された金額での再計画が必要になります。

ステップ6 契約・融資実行

条件に合意したら「金銭消費貸借契約」を締結し、指定口座に融資金が振り込まれます。申込みから融資実行まで、全体で3〜4週間が標準的なスケジュールです。物件契約や内装工事のタイミングから逆算して、余裕を持って動いてください。

全体のスケジュール感

ステップ所要期間累計
事業計画書の作成2〜4週間2〜4週間
書類準備・申込み1〜2週間3〜6週間
面談申込後1〜2週間4〜8週間
審査・結果通知面談後1〜2週間5〜10週間
契約・融資実行結果通知後1週間6〜11週間

事業計画書の作成に最も時間がかかります。見積書の取得や商圏調査を含めると1ヶ月以上かかることも珍しくありません。「物件が見つかってから動く」のではなく、物件探しと並行して計画書の作成を進めてください。

審査で見られるポイント

公庫の審査担当者が重点的に確認するポイントを5つに整理します。

経験・スキルの適合性

開業予定の業種での実務経験があるかどうかが最も重視されます。飲食店なら調理・店舗運営の経験年数、クリニックなら診療科の専門医経験、美容室なら技術者としてのキャリアが評価対象です。

異業種からの転身の場合、関連するスキル(営業経験、マネジメント経験など)を創業計画書と面談でアピールする必要があります。

自己資金の厚み

制度上の自己資金要件は撤廃されていますが、実務では自己資金の額が審査に影響する点は変わっていません。総額の2〜3割ある場合と、ほぼゼロの場合では承認率に差が出るとされています。

通帳のコピーで資金の流れが確認されるため、「見せ金」(一時的に借りて残高を作る方法)は通用しません。半年以上にわたってコツコツ貯めてきた履歴こそが評価の対象です。

信用情報

CIC・JICCといった信用情報機関に照会がかかり、過去のクレジットカードやローンの延滞歴をチェックされます。延滞記録が残っている間は、融資がきわめて通りにくくなる現実があります。

事前にCICで「信用情報の開示請求」(手数料1,000円、オンラインで即日取得可能)を行い、自分の記録を確認しておいてください。想定外の延滞記録が残っていたという事態は、事前の開示で防げます。

事業計画の現実性

売上予測の根拠が「希望的観測」ではなく「検証可能な数字」になっているかが問われます。

根拠として有効なのは、同業種・同規模の店舗の売上データ、商圏の人口・競合状況に基づく試算、前職での顧客リストや見込み取引先からの意向確認などです。「とりあえず月商100万円」では通りません。

返済能力

融資額に対して、月々の返済が無理なく行えるかどうかも確認されます。売上から経費を引いた利益で返済を賄えるか、万一売上が計画の7割に落ちても返済可能かといったストレステストの視点が入ります。

事業計画書の書き方 審査を左右する核心部分

事業計画書は全8セクションで構成されますが、審査の合否に直結するのは「必要な資金と調達方法」「事業の見通し(月別収支)」「創業の動機」の3つです。

必要な資金と調達方法

設備資金と運転資金に分けて、見積書と対応させながら記入します。

飲食店の場合の記入例:

資金区分内訳金額
設備資金内装工事費500万円
設備資金厨房機器200万円
設備資金看板・什器50万円
運転資金仕入れ(3ヶ月分)90万円
運転資金家賃・光熱費(3ヶ月分)120万円
運転資金広告宣伝費40万円
合計1,000万円
調達方法金額
自己資金300万円
日本政策金融公庫700万円
合計1,000万円

ポイントは「設備資金には見積書を添付」「運転資金は3ヶ月分を目安に」「調達方法で自己資金の比率を明示」の3点です。

事業の見通し(月別収支)

開業後1年目の月別収支計画を記載します。売上の根拠は「客単価 × 席数 × 回転率 × 営業日数」のように分解して書くと説得力が増します。

注意すべきは「開業月からフル稼働の売上を入れない」こと。飲食店の場合、開業1〜3ヶ月は計画の50〜70%、4ヶ月目以降で軌道に乗る想定が現実的です。

創業の動機

「なぜこの事業をやるのか」「なぜ今なのか」「なぜ自分なのか」の3点に答える内容にします。個人的な思い入れだけでなく、市場環境や自分の経験・スキルと事業の接点を示すと、説得力のある動機になります。

公庫のWebサイトには業種別の「創業計画書記入例」も公開されています。自分の業種に近い記入例をダウンロードして、構成を参考にしてください。

業種別の資金計画と融資戦略

業種によって必要資金の規模感、審査で重視されるポイント、事業計画書の書き方が異なります。代表的な6業種の特徴を整理します。

飲食店

開業資金の目安は300〜1,500万円(居抜き/スケルトン・規模で大幅に変動)。日本政策金融公庫の「新規開業実態調査」では飲食店の開業費用の中央値は約880万円とされています。

審査のポイントは「立地と商圏の根拠」「食材原価率の設定」「人件費計画」です。原価率30%、人件費率25%を大きく超える計画は、収益性の面で疑問を持たれます。業態によっても大きく異なり、カフェ業態は客単価が低い分、回転率と客数の根拠が求められます。居酒屋やレストランは客単価が高い反面、食材ロス率の管理が収支を左右します。

事業計画書の売上欄では「席数 × 回転率 × 客単価 × 営業日数」で分解するのが定石です。ランチとディナーで客単価が変わる場合はそれぞれ分けて記載します。

飲食店の開業準備全体については飲食店開業ガイドで資金内訳・業態別収支モデルから必要資格まで整理しています。

クリニック・医療

開業資金は5,000万〜1億円が標準的な規模です。医療機器・内装工事の初期投資が大きいため、融資額も大きくなります。公庫の融資限度額7,200万円だけでは足りないケースもあり、制度融資や民間銀行との併用が一般的です。

診療科ごとに設備投資の額が大きく異なります。内科・小児科で3,000〜5,000万円、整形外科でリハビリ機器を揃えると5,000〜8,000万円、眼科で手術設備を入れると8,000万〜1.5億円。CTやMRIを導入する場合は機器リースとの費用比較も必要です。

審査では診療圏分析(半径○km圏内の推計患者数)と、診療科ごとの診療報酬ベースの売上計画が重視されます。保険診療と自由診療の比率も収益構造に影響するため、計画書に織り込んでください。

クリニック開業の全体像はクリニック開業ガイドを参照してください。

美容室・サロン

開業資金は300〜800万円が一般的です。美容室は居抜き物件の流通量が多く、初期投資を抑えやすい業種です。一方で人件費比率が高い(40〜50%)ため、スタッフの離職リスクを含めた収支計画が求められます。

売上計画は「スタイリスト数 × 1日あたり施術人数 × 平均客単価 × 営業日数」で組みます。1人サロンの場合は1日5〜6人が上限の目安です。スタッフを雇用する場合は採用・教育コストと離職率も見込む必要があります。

審査では技術者としてのキャリア(スタイリスト歴・指名客数)と、既存顧客の移行見込みが確認されます。前職からどの程度の顧客が付いてくるかを具体的な数字で示せると評価が上がります。

美容室の開業準備については美容室開業ガイドでまとめています。

介護施設・福祉事業

デイサービスで1,500〜3,000万円、訪問介護事業所で300〜500万円が目安です。介護報酬は国保連経由で入金されるため、売上の根拠が介護報酬単価ベースで算出しやすい点が他業種と異なります。

一方で、介護報酬の入金は2ヶ月遅れのため、開業後2〜3ヶ月分の運転資金を多めに確保する必要があります。この「入金タイムラグ」を事業計画に織り込んでいないと、審査で指摘されます。デイサービスの場合、定員18名で稼働率80%を見込むと、月の売上は約250〜300万円(介護度3の場合)。ここから人件費・家賃・送迎費用等を差し引いた利益で返済を賄えるかが論点になります。

介護施設の開業準備は介護施設開業ガイドで解説しています。

フィットネスジム・スクール

パーソナルジムで300〜800万円、総合フィットネスで2,000〜5,000万円、スクール系で200〜600万円が目安です。マシン購入(またはリース)の判断が資金計画に直結します。

会員制ビジネスのため、売上計画は「会員数 × 月会費 × 継続率」で組みます。開業直後の会員獲得ペース(月10〜20名が現実的)と、3ヶ月後・6ヶ月後の退会率を織り込んでください。会員が安定するまでの6ヶ月間の赤字をカバーする運転資金の確保が重要です。

業種別の融資額と審査重視ポイント一覧

業種開業資金目安融資額の目安審査で特に見られる点
飲食店300〜1,500万円200〜1,000万円立地・原価率・回転率
クリニック5,000万〜1億円3,000〜7,200万円診療圏分析・診療報酬計画
美容室300〜800万円200〜600万円技術経験・既存顧客移行
介護施設300〜3,000万円200〜2,000万円介護報酬試算・入金タイムラグ
フィットネス300〜5,000万円200〜3,000万円会員獲得ペース・継続率
スクール200〜600万円150〜400万円生徒数見込み・講師確保

融資と補助金の組み合わせ方

融資と補助金は併用可能ですが、それぞれの性質が異なります。

項目融資補助金
返済必要(利息あり)不要(返済義務なし)
入金タイミング事業開始前に一括事業実施後に後払い
審査のポイント返済能力・事業計画事業の革新性・公益性
金額規模数百万〜数千万円数十万〜数百万円(制度による)
所要期間3〜4週間2〜6ヶ月

開業時の資金調達で最も実務的な組み合わせは、「融資で初期投資を確保し、補助金で一部を回収する」パターンです。

たとえば、IT導入補助金でPOSレジ・予約システムの導入費用の一部を補助してもらう、小規模事業者持続化補助金でチラシ・ホームページの制作費用を申請するといった使い方が一般的です。

注意点は「補助金の入金は事業実施後」であるため、初期投資の全額を補助金に頼る計画は成り立たないことです。融資で手元資金を確保した上で、補助金は「あとから戻ってくるボーナス」として計画するのが現実的です。

補助金の選び方については補助金の選定戦略ガイド、電子申請に必要なgBizIDの取得方法はgBizIDの取得方法で解説しています。

融資以外の資金調達手段も知っておく

公庫の創業融資が最もポピュラーな手段ですが、事業の性質によっては他の選択肢も検討に値します。

信用保証協会付き融資(民間銀行経由)

地方銀行や信用金庫で、信用保証協会の保証を付けて融資を受ける方法です。自治体の制度融資もこの枠組みを使います。公庫と併用できるため、大型の設備投資が必要な場合の追加調達に使えます。審査期間が長い(1〜2ヶ月)点と、保証料(年0.5〜1.5%程度)が別途かかる点がデメリットです。

日本政策金融公庫の資本性ローン

「挑戦支援資本強化特別貸付」と呼ばれる制度で、金融検査上「自己資本」として扱われる融資です。通常の融資と異なり、期限一括返済(5年1ヶ月・7年・10年・15年・20年)で毎月の元金返済が不要。金利は業績に連動(赤字なら0.9%、黒字なら最大6.85%)。

他の金融機関からの融資と組み合わせやすい点が最大のメリットです。公庫の資本性ローンで500万円を調達すると、それが「自己資本」としてカウントされるため、民間銀行からの追加融資が受けやすくなります。

クラウドファンディング

飲食店やスクールなど、開業前から地域の支持を集められる業種で有効です。資金調達だけでなく、開業前の認知獲得と見込み顧客の確保を兼ねられるのが強みです。

ただし、調達額は50〜300万円程度が現実的なレンジです。全額をクラウドファンディングで賄おうとするのは非現実的で、融資と組み合わせる「プラスアルファ」として活用するのが合理的です。リターン品の原価と発送コストも事前に計算してください。

補助金・助成金(単独での資金調達は不可)

補助金は「事業実施後の後払い」であり、開業前の資金としては使えません。融資で初期投資を確保した後に、設備投資や広告宣伝費の一部を補助金で回収する流れになります。補助金の具体的な組み合わせ方は前のセクションで解説しました。

自己資金が少ない場合の対処法

自己資金要件が撤廃されたとはいえ、手元資金が少ない状態での開業にはリスクが伴います。審査に通りやすくしつつ、開業後の資金ショートを防ぐ方法を整理します。

小さく始めて実績を作る

いきなり大規模な設備投資をせず、最小限の設備で開業し、黒字化してから追加融資で拡大する方法です。飲食店なら間借り営業やキッチンカーからスタートする、美容室なら面貸しから始めるといった選択肢があります。

小規模で半年〜1年の実績を作ると、追加融資の審査で「実績のある事業者」として評価されます。

制度融資と公庫を併用する

自己資金300万円に対して、公庫から500万円、市区町村の制度融資から200万円を調達するといった分散調達も有効です。それぞれの審査基準が異なるため、一箇所で減額されても別の窓口でカバーできる可能性があります。

創業支援等事業計画の認定を受ける

市区町村の「創業支援等事業計画」に基づく特定創業支援等事業の認定を受けると、日本政策金融公庫の融資で金利引下げの対象になります。各地域の商工会議所や創業支援センターで、創業塾やセミナーを受講することで認定が得られます。受講は無料のケースが大半です。

よくある失敗パターンと回避策

創業融資で失敗するパターンは限られています。事前に知っておけば避けられるものがほとんどです。

物件契約を先にしてしまう

融資の審査結果が出る前に物件の本契約を結んでしまうケースです。融資が否決または減額された場合、物件の違約金が発生するリスクがあります。物件は仮契約(予約)にとどめ、融資の内諾を得てから本契約に進んでください。

売上計画が楽観的すぎる

開業初月からフル稼働の売上を見込んでいると、審査で「非現実的」と判断されます。開業1〜3ヶ月は売上計画の50〜70%で組み、4ヶ月目以降に徐々に100%に近づけるのが標準的です。

運転資金を少なく見積もる

設備資金だけを計算して運転資金を軽視する失敗です。家賃・人件費・仕入れの3ヶ月分に加えて、自分の生活費3ヶ月分も計画に入れてください。「売上が立たなくても3ヶ月は持つ」状態を作ることが、開業後の精神的余裕にもつながります。

複数の金融機関に同時申込みする

公庫と民間銀行に同時に申込むと、信用情報に照会記録が複数残り、「この人は資金繰りに困っているのでは」と判断されることがあります。まず公庫に申込み、結果が出てから制度融資や民間銀行を検討するのが安全な順序です。

生活費を計画に入れていない

開業後3〜6ヶ月は自分の給料が出ない前提で、個人の生活費を別枠で確保しておく必要があります。家賃・食費・社会保険料を月25万円として、6ヶ月分で150万円。この金額を融資の「必要な資金」に含めず、事業の売上から充てようとすると、黒字化前にキャッシュアウトします。

創業融資を受けた後の返済計画

融資は「借りて終わり」ではなく、返済計画の設計が開業の成否を左右します。

据置期間を活用する

公庫の融資には据置期間(元金の返済を猶予する期間)が設定できます。設備資金は5年以内、運転資金は2年以内が上限です。開業初期は売上が安定しないため、据置期間を6ヶ月〜1年に設定し、利息のみの支払いでキャッシュフローを確保するのが一般的です。

据置期間中は利息のみの支払いになります。融資700万円・金利3.0%の場合、月々の利息は約1.75万円。据置期間が終了すると元金+利息の通常返済に切り替わるため、据置期間中に売上を軌道に乗せることが前提になります。

返済額から逆算する事業計画

融資700万円・金利3.0%・返済期間10年の場合、月々の返済額は約6.8万円です。この返済額を「最低限稼がなければならない利益」として売上計画に組み込みます。

売上 − 原価 − 固定費 − 返済額 = 手取り

この手取りが自分の生活費を賄える水準になっているかを確認してください。計画段階で赤字になる場合、融資額・返済期間・事業規模のいずれかを見直す必要があります。

融資額別の月額返済シミュレーション

融資額金利返済期間月額返済年間返済
300万円3.0%7年約3.9万円約47万円
500万円3.0%10年約4.8万円約58万円
700万円3.0%10年約6.8万円約81万円
1,000万円3.0%10年約9.7万円約116万円
3,000万円3.0%15年約20.7万円約248万円
5,000万円3.0%20年約27.7万円約333万円

月額返済が売上の10%を超えると資金繰りが厳しくなりやすい傾向があります。飲食店で月商300万円なら月額返済は30万円以内が目安です。

繰上返済と借換え

公庫の融資は繰上返済が可能です(手数料なし)。事業が軌道に乗って余剰資金が出た場合、繰上返済で総利息を減らせます。

逆に、返済が厳しい場合は支店に相談して返済条件の変更(リスケジュール)を申し出ることもできます。延滞する前に相談するのが重要で、滞納が発生すると信用情報に記録が残り、追加融資や他の金融機関からの借入れに影響が出ます。

面談で聞かれることと準備のコツ

公庫の面談は「書類に書いたことの裏取り」です。事業計画書の内容を自分の言葉で説明できるかどうかが勝負です。

よく聞かれる質問

面談でほぼ確実に聞かれる質問をリストアップします。

  • なぜこの事業を始めようと思ったのか(創業の動機)
  • この事業の経験はどれくらいあるか(職歴との関連)
  • 売上計画の根拠は何か(客単価・客数の算出方法)
  • 競合との差別化ポイントは何か
  • 資金が足りなくなった場合はどうするか
  • 家族の理解は得られているか
  • 他に借入れはあるか

これらに対して「事業計画書に書いてあるとおりです」ではなく、具体的なエピソードや数字を交えて答えられるよう準備してください。

面談で評価が上がるポイント

物件の写真・商圏の地図・競合店舗の調査結果など、追加資料を持参すると「本気度」が伝わります。口頭の説明だけでなく、ビジュアルで示せると面談担当者の理解が早くなります。

また、「最悪のシナリオ」への準備も評価されます。「売上が計画の7割に落ちた場合、どこのコストを削るか」「3ヶ月売上が立たなくても持ちこたえられる資金は確保しているか」といった質問に答えられると、リスク管理能力が伝わります。

面談後の流れ

面談後、追加書類を求められることがあります。見積書の再提出、物件の賃貸借条件の確認書類、取引先からの確認書などです。求められたらすみやかに対応してください。対応の遅さが「この人は事業を進める推進力があるか」の判断材料になることもあります。

まとめ 融資は「準備した人」が通る

創業融資の受け方を整理すると、成功のカギは「書類の完成度」と「数字の根拠」に集約されます。

やるべきことは明確です。

  1. 信用情報を事前に確認する(CICで開示請求)
  2. 自己資金を計画的に貯める(通帳6ヶ月分のコツコツ貯蓄が評価される)
  3. 事業計画書を業種別テンプレートで作成し、売上の根拠を分解する
  4. 物件は仮契約にとどめ、融資の内諾後に本契約
  5. 運転資金3ヶ月分+生活費3ヶ月分を計画に含める
  6. 補助金は「後から戻る追加資金」として別計画にする

融資の制度は整っています。審査で落ちるのは「制度を知らない」からではなく、「準備が足りない」からです。この記事の手順に沿って一つずつ準備を進めてください。


創業融資のご相談はローカルマーケティングパートナーズへ

融資の事業計画書作成、補助金との組み合わせ設計、開業後の集客まで、開業準備をワンストップで伴走します。開業支援パックでは、資金調達・ライフライン手配・マーケティング設計をまとめてご相談いただけます。

開業支援パックの詳細はこちら | 無料相談はこちら

よくある質問

Q. 創業融資は自己資金ゼロでも受けられますか?

A. 2024年4月の制度改正で自己資金要件は撤廃されました。ただし審査では資金の準備状況が評価されるため、自己資金がゼロだと融資額が減額される可能性があります。開業資金総額の2〜3割を目安に貯蓄しておくと審査で有利です。

Q. 創業融資の審査にはどれくらいの期間がかかりますか?

A. 日本政策金融公庫の場合、申込みから融資実行まで概ね3〜4週間です。面談の予約状況によっては1ヶ月以上かかることもあります。物件の契約タイミングから逆算して、余裕を持って申込みましょう。

Q. 創業融資と補助金は併用できますか?

A. 併用可能です。融資は事業開始前に資金を確保する手段、補助金は事業実施後に経費の一部が戻る仕組みなので役割が異なります。融資で初期投資を賄い、補助金で設備投資の一部を回収する組み合わせが定石です。

Q. 事業計画書は自分で書けますか?

A. 日本政策金融公庫のホームページに業種別テンプレートが公開されており、自分で作成できます。売上計画・原価率・固定費のリアルな数字を根拠付きで記載することが求められます。数字の組み立てに不安がある場合は、税理士や創業支援機関に相談するのが確実です。

Q. 過去に借入れの延滞歴があっても融資を受けられますか?

A. 信用情報機関(CIC・JICC)に延滞記録が残っている間は審査通過が難しくなります。延滞解消後5〜10年で記録は消去されます。事前にCICで自分の信用情報を開示請求し、記録の有無を確認してから申込むことをおすすめします。

Author / Supervisor

山本 貴大

監修

山本 貴大

代表取締役 / 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ

マーケティング支援の実務経験を活かし、BtoB/BtoCの戦略設計から施策実行まで150件超のプロジェクトを統括。地場の店舗ビジネスからスタートアップ、上場企業まで、現場に入り込んで再現性あるマーケティングを構築する。セミナー支援では企画・運営・登壇まで一気通貫で手がける。

LinkedIn

関連サービス

PILLAR GUIDE 店舗のSEO対策 ガイド記事を読む

開業の資金調達・コスト設計を相談する

融資・補助金・ライフラインまでワンストップで伴走。初回相談は無料です

150件超の店舗支援実績 / 初回相談無料 / 秘密厳守