SaaS指名検索の増やし方 ブランド認知と想起獲得
SaaSマーケティング

SaaS指名検索の増やし方 ブランド認知と想起獲得

執筆: ローカルマーケティングパートナーズ 編集部

監修: 山本 貴大

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SaaS企業の指名検索とは、ユーザーがサービス名やブランド名を直接検索する行動を指します。指名検索の増加はブランド認知の進展を示す先行指標であり、CPA低減とCVR向上に直結します。

  • 指名検索経由のCVRは非指名検索の3〜5倍。獲得効率が大幅に改善する
  • Google Search Consoleのブランドクエリ推移を月次で追跡する
  • 認知→理解→想起→検索の4段階で施策を設計する
  • コンテンツ・PR・SNS・コミュニティの4チャネルを組み合わせる
  • フェーズごとにブランド投資の比率を見直す

BtoB SaaS市場では、カテゴリ内の選択肢が増え続けています。リスティング広告のCPCは年々上昇し、比較サイト経由のリードは競合と横並びになりがちです。SaaS広告戦略でCPAを最適化する取り組みも重要ですが、この環境で安定的にリードを獲得し続けるには、見込み顧客の頭の中に自社サービスを想起させる「ブランド」の力が不可欠です。

本稿では、SaaS企業が指名検索を増やすための施策を、認知構築からモニタリングまで体系的に整理します。

指名検索がSaaS成長に直結する理由

指名検索がSaaSビジネスに与える影響は、大きく3つの側面から説明できます。

指名検索で流入したユーザーは、すでにサービスの存在を知り、関心を持っています。一般的なキーワード検索と比較してCVR(コンバージョン率)は3〜5倍に達します。リスティング広告と異なり、クリックごとの課金も発生しません。

「CRM ツール 比較」のような一般検索では、常に競合と比較される状態に置かれます。一方、「サービス名 + 料金」「サービス名 + 評判」のような指名検索では、自社だけの土俵で勝負できます。

指名検索で流入した顧客は、ブランドへの信頼度が高い傾向があります。オンボーディング設計への取り組み姿勢が前向きで、解約率も低くなるケースが多いです。

指名検索 vs 一般検索 指名検索 非指名検索 CVR 8〜15% CPA 低い(自然流入) 解約率が低い傾向 LTV高(信頼ベース) CVR 1〜3% CPA 高い(広告依存) 解約率が高い傾向 LTV低(比較検討ベース)

SaaSの成長は「新規獲得 − 解約」の差分で決まります。指名検索を増やすことは、この両方に効く数少ない施策です。

ブランド認知の構築ステップ

ブランド認知は一足飛びに獲得できるものではありません。見込み顧客の意識の中で、以下の4段階を順に進む必要があります。

段階1 認知(Awareness)

サービスの存在を知ってもらう段階です。ターゲットとなる業界や職種の人々が、自社サービスの名前を一度は見聞きしている状態を目指します。

施策としては、PR・メディア露出、業界イベントへの登壇、広告(純広告・SNS広告)が有効です。この段階では機能の説明より、「何を解決するサービスか」の一言メッセージが重要になります。

段階2 理解(Understanding)

サービスの価値と特徴を理解してもらう段階です。「名前は聞いたことがあるが、何のサービスかは分からない」という状態から、「こういう課題を解決するツール」と認識される状態への移行です。

コンテンツマーケティング(ブログ、ホワイトペーパー)、ウェビナー、事例コンテンツが中心施策になります。

段階3 想起(Recall)

特定のカテゴリで課題が発生した際に、自社サービスが選択肢として思い浮かぶ段階です。ブランドの最終目的はここにあります。

想起を獲得するには、繰り返しの接触が必要です。メルマガ、SNSでの継続発信、コミュニティ運営など、長期的な接点維持の施策が該当します。

段階4 検索(Search)

想起の結果として、実際にサービス名で検索する行動が生まれます。この段階は施策というより、段階1〜3の結果として自然に発生するものです。

Google Search Consoleでブランドクエリの推移をモニタリングし、段階1〜3の投資効果を測定します。

コンテンツマーケティングによる想起獲得

SaaS企業のコンテンツマーケティングは、リード獲得だけでなくブランド想起の獲得にも効果があります。ポイントは「カテゴリ所有」の意識です。

自社が属するカテゴリ(例: 「プロジェクト管理」「人事労務」「経費精算」)に関する情報の第一想起を取ることです。そのカテゴリについて調べると必ず自社のコンテンツに辿り着く状態を作ります。

ハブ&スポーク型コンテンツ設計

カテゴリの中心テーマとなる包括的な記事(ハブ記事)を軸に、個別テーマの記事(スポーク記事)を配置する構造です。

ハブ記事はカテゴリ全体を俯瞰する内容にします。例えば「プロジェクト管理の基本と手法」のような記事がハブです。スポーク記事は「ガントチャートの書き方」「WBSの作り方」など、個別の手法やノウハウを深掘りします。

この構造の利点は2つです。第一に、検索エンジンからの流入が面で取れること。第二に、ユーザーが複数回接触する中で「このカテゴリならこのサービスのメディア」という想起が形成されることです。

想起に寄与するコンテンツの特徴

SEO目的の記事と、想起目的の記事では設計思想が異なります。

項目SEO目的コンテンツ想起目的コンテンツ
目的検索流入の獲得ブランド想起の形成
内容一般的なノウハウ独自の調査・見解
著者編集部名義代表・専門家名義
拡散SEO経由SNS・メルマガ経由
更新定期リライト旬のテーマで新規

想起に効くのは、独自の調査データ、明確な意見・見解、業界レポートなど、自社にしか出せないコンテンツです。誰でも書ける一般論ではなく、自社の実績や知見に基づく発信がブランドの輪郭を形作ります。

支援先のSaaS企業でコンテンツ施策を設計する際に意識しているのは、SEO目的の「集客記事」と想起目的の「ブランド記事」の予算配分です。多くの企業がSEO記事に100%のリソースを投下してしまいますが、実務では集客記事70%、ブランド記事30%の比率を推奨しています。ブランド記事とは、代表名義で業界の課題に対する明確な意見を述べる記事や、自社の支援実績をベースにした独自レポートのことです。この手の記事はSEOでの流入が少なくても、SNSでの拡散やメルマガ経由の閲覧を通じてカテゴリ想起の形成に大きく寄与します。実際に、週1本のブランド記事発信を6ヶ月継続したSaaS企業で、指名検索のGSC表示回数が月間200回から800回に増加した事例があります。

PR・メディア露出の活用

SaaS企業のPR活動は、直接的な認知拡大に加え、被リンクによるSEO効果も期待できます。

プレスリリースの活用

PR TIMESをはじめとしたプレスリリース配信サービスを活用します。配信のタイミングは、新機能リリース・資金調達・導入事例・調査レポートの4つが主なフックになります。

月1〜2本のペースでコンスタントに配信することで、メディア関係者への接触頻度を維持します。配信したリリースは自社サイトにも掲載し、被リンクの起点にします。

業界メディアへの寄稿

ターゲット顧客が読んでいる業界メディアに記事を寄稿する施策です。自社名とサービス名の露出に加え、著者としての専門性を示すことで、個人ブランドとサービスブランドの両方を構築できます。

取材対応の仕組み化

メディアからの取材依頼に迅速に対応できる体制を整えておきます。代表や事業責任者のメディアキット(経歴・写真・コメント可能テーマ一覧)を事前に準備し、問い合わせから24時間以内に返答できる状態にしておくことが理想です。

SNSとコミュニティでの認知拡大

SNS・コミュニティマップ 代表・社員の個人発信 X(Twitter): 業界知見・意見発信 LinkedIn: 事例・実績の共有 note: 長文コンテンツ・ストーリー コミュニティ運営 Slackコミュニティ: 日常的な交流 ユーザー会: 導入企業同士の接点 勉強会: テーマ特化のナレッジ共有 継続接触 → カテゴリ想起 → 指名検索

代表・社員による個人発信

BtoB SaaSにおいて、SNSでの個人発信はブランド構築の最も費用対効果が高い施策の一つです。

X(Twitter)では業界の動向や課題に対する自社の見解を発信します。短文で頻度高く(週3〜5回)投稿し、フォロワーとの対話を通じて認知を広げます。

LinkedInはビジネス文脈での発信に適しています。導入事例のダイジェスト、業界カンファレンスの感想、採用に関する発信など、公式アカウントでは出しにくい「人」の見える発信が効果的です。

noteは長文コンテンツの配信に使えます。自社ブログとは別の読者層にリーチでき、プロダクト誕生の背景やチーム文化など、ストーリー性のある発信に向いています。

コミュニティの構築と運営

自社サービスのユーザーやカテゴリに興味のある人々が集まるコミュニティを運営する施策です。Slackコミュニティ、ユーザー会、勉強会の3つが代表的な形式です。

コミュニティの規模は小さくても問題ありません。20〜50人のアクティブメンバーがいれば、口コミによる認知拡大が期待できます。重要なのは参加者同士の交流を促進し、コミュニティに参加する価値を提供し続けることです。

指名検索のモニタリングとKPI

モニタリングツールと指標

最も正確な指名検索データが取得できます。サービス名・ブランド名を含むクエリでフィルタし、表示回数・クリック数・CTR・平均順位を月次で記録します。

検索ボリュームの相対的な推移を把握できます。競合サービスとの比較も可能です。絶対数は分かりませんが、トレンドの変化を捉えるのに有効です。

X(Twitter)やLinkedInでの自社サービスへの言及回数を追跡します。ツールを使う場合はSocial InsightやMentionが選択肢になります。

KPI設計の例

指標測定ツール目標例(月次)
ブランドクエリ表示回数Search Console前月比+10%
ブランドクエリCTRSearch Console60%以上維持
指名検索CVRGA410%以上
SNSメンション数Social Insight等前月比+15%
Googleトレンド指数Googleトレンド前四半期比+20%

指名検索のモニタリングは月次レポートに組み込みます。マーケティング全体のKPIダッシュボードの中に「ブランド指標」のセクションを設け、リード獲得指標と並行して追跡する運用が理想です。

フェーズ別のブランド投資判断

立ち上げ期(ARR 0〜1億円)

ブランド投資比率: マーケティング予算の10〜15%

この段階では、プロダクトのPMF検証が最優先です。ブランド施策は低コストで始められるものに限定します。

具体的には、代表のSNS発信(週3回以上)、業界メディアへの寄稿(月1本)、セミナー・勉強会への登壇(月1回)が中心です。大規模な広告投資やPRキャンペーンはこの段階では時期尚早です。

成長期(ARR 1〜10億円)

ブランド投資比率: マーケティング予算の20〜30%

PMFが確認でき、獲得チャネルのスケールが課題になるフェーズです。この段階でブランド投資を本格化させます。

PR TIMESでの定期配信(月2回)、業界カンファレンスのスポンサー、ユーザーコミュニティの立ち上げ、カテゴリ特化のコンテンツ量産を進めます。コンテンツは量より質に転換し、独自調査レポートや代表名義のオピニオン記事を強化します。

拡大期(ARR 10億円以上)

ブランド投資比率: マーケティング予算の25〜35%

市場のリーダーポジションの確立を目指すフェーズです。テレビCM・交通広告などのマス広告、大規模カンファレンスの自社開催、業界アワードの創設なども選択肢に入ります。

ただし、マス広告はBtoB SaaSにおいては費用対効果が読みにくい施策です。ターゲットが明確な業界メディアへの出稿や、タクシー広告のような絞り込みが効く媒体を優先します。

指名検索を増やすブランド施策は、即効性のあるリード獲得施策と比べて投資回収に時間がかかります。しかし、カテゴリ内で想起を獲得したSaaS企業は、獲得効率と解約率の両面で長期的な優位性を築いています。自社のフェーズに合った施策を選び、継続的に投資していくことが重要です。

SaaSマーケティングの全体構造と戦略設計はSaaSマーケティング体系ガイドで解説しています。

よくある質問

Q. 指名検索はどの程度あればSaaS企業として合格水準ですか

A. 絶対数よりも月次の成長率が重要です。立ち上げ期は月間100〜300回、成長期で1,000回以上を目安にします。Google Search Consoleで自社サービス名・ブランド名を含む検索クエリの推移を月次で追跡し、前月比10%増を最初の目標にするとよいでしょう。

Q. ブランド認知施策はどのくらいの期間で効果が出ますか

A. 短期では3ヶ月でPR・広告経由の認知獲得が始まり、6ヶ月でコンテンツ経由の想起効果が出始めます。指名検索が安定的に増加するまでには12ヶ月前後かかるのが一般的です。途中で止めず、継続的に投資し続けることが重要です。

Q. ブランド施策の費用対効果はどう測定しますか

A. 指名検索経由のコンバージョン単価を非指名検索と比較する方法が最も直接的です。一般的に指名検索経由のCVRは非指名の3〜5倍になるため、ブランド投資の効果はCPAの差額として定量化できます。

Q. 小規模なSaaS企業でもブランド施策は必要ですか

A. ARR 1億円未満のフェーズでも、指名検索を増やす取り組みは有効です。大規模な広告投資は不要で、代表のSNS発信・業界メディアへの寄稿・セミナー登壇など低コストの施策から始められます。重要なのはカテゴリ内での想起を得ることです。

Author / Supervisor

山本 貴大

監修

山本 貴大

代表取締役 / 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ

マーケティング支援の実務経験を活かし、BtoB/BtoCの戦略設計から施策実行まで150件超のプロジェクトを統括。地場の店舗ビジネスからスタートアップ、上場企業まで、現場に入り込んで再現性あるマーケティングを構築する。セミナー支援では企画・運営・登壇まで一気通貫で手がける。

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