DMOと連携したインバウンド集客 中小事業者が押さえるべき実務ガイド
BtoBマーケ

DMOと連携したインバウンド集客 中小事業者が押さえるべき実務ガイド

執筆: ローカルマーケティングパートナーズ 編集部

監修: 山本 貴大

SHARE

DMO連携は「登録DMOに会員として加入すれば勝手に送客が増える」ものではありません。広域連携DMO・地域連携DMO・地域DMOの違いを理解したうえで、自社の商圏とターゲット市場に合う連携先を選び、共同プロモーションや商談会などの接点を継続的に使い倒して初めて成果が出ます。本稿では中小の観光事業者が押さえるべき連携の実務を、事業者目線で整理します。

  • 登録DMOは322件 — 広域連携10件・地域連携117件・地域195件(2025年6月時点 観光庁)
  • 連携先は対象エリア/ターゲット市場/実施施策/実績/連携条件の5軸で選ぶ
  • 費用感は年会費数万円〜数十万円+共同施策の個別負担が中心
  • 成果測定・予算合意・情報共有ルールを入口で詰めないと形骸化する

DMOとは何か — 観光庁登録制度の基礎

DMOは「Destination Management/Marketing Organization」の略で、日本では観光庁が「観光地域づくり法人」として登録制度を運用しています。地域の「稼ぐ力」を引き出し、観光地域づくりの司令塔として多様な関係者と連携しながら戦略を策定・実行する法人、と定義されています。

2015年に「日本版DMO候補法人」として制度がスタートし、2020年4月に制度が厳格化されました。現在は候補DMOを経て登録DMOへ本登録される2段階方式が採られ、3年ごとの更新審査で要件を満たさないDMOは登録取り消しの対象になります。

2025年6月時点で登録DMOは322件に達しており、内訳は広域連携DMO10件、地域連携DMO117件、地域DMO195件です。事業者側から見ると、全国どの地域に出店していても少なくとも1〜3のDMOが自社の商圏をカバーしている計算になります。

登録DMOに求められる5つの要件

登録には観光庁が定める要件を満たす必要があり、これは事業者がDMOの信頼性を判断する材料にもなります。

要件内容
合意形成機能地方公共団体・事業者・住民など多様な関係者の合意形成ができること
データ収集分析観光客の動態・満足度・消費額などのデータを継続的に収集・分析すること
戦略策定KPIを設定し、PDCAサイクルを回すマネジメント体制を持つこと
法人格と人材法人格を有し、専門人材(CMO相当)を配置すること
運営資金安定的な運営資金を確保すること(会費・事業収益・補助金など)

連携先を評価する際、これらの要件をどの程度実質的に満たしているかを確認すると、登録書類上のDMOと実行力のあるDMOを見分けやすくなります。

3分類の違い — 広域連携DMO・地域連携DMO・地域DMO

登録DMOは対象エリアの広さで3分類されています。事業者が連携先を選ぶ際、最初に押さえる軸です。

広域連携DMO(全国10件)

都道府県をまたぐ地方ブロック単位で観光地域づくりを統括するDMOです。2025年時点で登録は10件で、代表例は次のとおりです。

名称本部対象エリア
せとうち観光推進機構広島県兵庫・岡山・広島・山口・徳島・香川・愛媛
雪国観光圏新潟県新潟・群馬・長野の3県7市町村
北海道観光機構北海道北海道全域
東北観光推進機構宮城県東北6県
中央日本総合観光機構愛知県中部地方9県
関西観光本部大阪府関西2府7県
九州観光機構福岡県九州7県
四国ツーリズム創造機構香川県四国4県
山陰インバウンド機構島根県鳥取・島根

広域連携DMOは海外でのプロモーション予算規模が大きく、欧米豪・アジア主要国向けの商談会や情報発信の窓口として機能します。単独でのインバウンド集客が難しい中小事業者にとって、広域プロモーションへの便乗は現実的な選択肢です。

地域連携DMO(全国117件)

複数の市町村が連携して1つのDMOを構成するタイプです。「雪国観光圏」のような圏域ブランド型、「海の京都DMO」のような県内広域型、「アルプス山岳観光圏」のような自然資源連携型など形は多様です。

地域連携DMOは広域ほど予算が大きくないものの、個別事業者との距離が近く、コンテンツ造成や販売支援まで踏み込んで伴走するケースが多いのが特徴です。

地域DMO(全国195件)

単一市町村を対象とするDMOで、多くは従来の観光協会を母体としています。京都市観光協会(DMO KYOTO)、飛騨・高山観光コンベンション協会、箱根町観光協会、鎌倉市観光協会、金沢市観光協会、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)などが代表例です。

地域DMOは事業者1件1件との顔が見える関係性が強く、着地型商品の造成・販売や、宿泊事業者との送客連携に直接関与します。中小事業者にとってもっとも連携の入口が作りやすい層です。

観光協会・DMC・インバウンド支援会社との違い

DMOと混同されやすい組織との違いも整理しておきます。

組織主な役割決定権・自律性
DMO地域観光戦略の策定・実行・KPI管理法人として独立し、戦略決定権を持つ
観光協会イベント運営・観光案内・会員交流自治体補助金への依存が強く、戦略決定権は限定的
DMC着地型商品の造成・運営・販売民間事業者として商業ベースで動く
支援会社DMO・自治体向けの業務受託戦略実行の外部リソース

地域によってはDMOと観光協会が同一法人という場合もあれば、DMOが戦略策定、DMCが着地商品の実行販売、というように役割分担しているケースもあります。連携する前に、対象エリアの組織構造を確認しておくと混乱が減ります。

なぜ中小事業者にDMO連携が必要なのか

観光庁の統計では、訪日外国人旅行消費額は2024年に8兆1395億円、2025年は過去最高の9兆円台到達が見込まれており、単価・延べ宿泊数とも回復基調が続いています。一方で、地方圏への分散はまだ道半ばで、消費額の約6割は東京都・大阪府・京都府の3都市に集中しています。

中小事業者が地方でインバウンドを取り込もうとすると、次の壁に当たります。

単独での対処の難しさ
海外認知の確保自社単独で海外プロモ予算を組むと赤字になる
多言語対応通訳・翻訳・多言語サイト運用の固定費が重い
海外OTA・エージェント開拓個別に商談してもロットが小さく相手にされにくい
データ収集自社顧客データだけで市場全体を読めない
安全・危機管理疾病・災害時の多言語情報発信が単独では難しい

DMO連携は、これらを地域全体で束ねてシェアする仕組みです。単独事業者では固定費が回収できない投資を、会費・負担金・自治体予算・国の補助金と組み合わせて回す設計になっているため、中小事業者ほどレバレッジが効きやすい構造です。

連携で見落としがちな副次効果

直接的な送客効果以外に、次の副次効果も見逃せません。

副次効果実務上のインパクト
自治体からの信頼獲得補助金採択・観光振興予算配分で優先されやすくなる
金融機関の評価地銀・政策金融公庫が地域観光振興の連携実績を評価する
採用面の訴求地域貢献性のある職場として求人応募が集まりやすい
同業ネットワーク形成繁閑期相互送客・予約枠融通など運営面の互助が機能する

地方の中小事業者にとっては、送客だけでなくこれらのハロー効果を獲得できる点にもDMO連携の価値があります。

連携のメリット — 中小事業者が得られる4つの価値

DMO連携を検討するとき、何が得られるかを事業者目線で整理すると次の4点に集約できます。

1. 広域プロモーション予算への便乗

単独で海外プロモーション予算を確保できない事業者でも、DMOが実施する観光庁補助事業・JNTOとの共同プロモーション・海外商談会・インフルエンサー招聘などに「掲載事業者」として参加できます。予算規模が違う施策に少額負担で混ぜてもらえる形です。

2. 多言語対応・決済インフラの共有

DMOが地域全体で整備する多言語サイト、翻訳コールセンター、観光案内所の多言語対応、キャッシュレス決済インフラなどを共同利用できます。個別事業者が独自に揃えると過大な投資になる部分をシェアできるのは、小規模宿泊施設や体験事業者にとって大きい価値です。

3. 観光データへのアクセス

DMOは域内の観光動態データ、宿泊稼働率、国籍別消費動向、満足度調査などを継続的に収集しています。会員事業者にはこれらのデータがレポートとして共有されるケースが多く、自社のマーケティング戦略を組み立てる上で有用です。エリアマーケティングの実務的なデータ活用についてはエリアマーケティングの実務ガイドも参照してください。

4. 事業者ネットワークと連携商品の可能性

同じDMOに加盟している宿泊施設・体験事業者・飲食・交通事業者などとのネットワークが形成され、着地型商品の共同造成、OTAへの共同登録、連携パッケージ販売などが動きやすくなります。個別事業者が独自にBtoB営業するより、DMOの場を使うほうが圧倒的に速いのが実情です。

連携前の自社チェック — 準備なしで問い合わせないために

DMOに問い合わせる前に、自社側の情報を整理しておくと初回面談の質が上がります。逆に、情報が曖昧なまま問い合わせると、「まずは会員になってから考えましょう」と流されて、入会後も動きが作れない結果になりがちです。

整理しておく5項目

項目整理する内容
事業概要業態・客室数/提供メニュー数・既存売上の国内/インバウンド比率
客層と現状の流入経路国籍・年代・客単価と、直販/OTA/エージェントの内訳
取りたい市場国・地域・年代・旅行目的(例: 欧米豪の長期滞在富裕層)
既存の取り組み実績多言語サイト・SNS多言語運用・OTA登録状況・受賞歴
連携で実現したいこと送客増/ブランド構築/商品造成/データ取得のどれが優先か

この5項目を1枚のシートに整理してから問い合わせると、DMO担当者は「この事業者はどの共同事業に紐づけられそうか」を即座に判断でき、マッチングの精度が上がります。

棚卸しで見えてくる課題

自社チェックの過程で、DMO連携より先に整備すべき項目が見つかることもあります。例えば、多言語サイトがない、OTAに登録していない、予約システムが日本語のみ、問い合わせ対応が日本語限定、といった状態です。

これらが揃っていないとDMOが共同プロモを打っても受け皿がないため、DMO連携と並行して、受け入れ環境の整備を進める必要があります。連携だけを先行させても取り逃すトラフィックが増えるだけで、かえって機会損失になります。

連携を始める実務ステップ

DMO連携は「正式な申込フォームに書いて終わり」ではなく、関係性構築の要素が強いため、段階的に進めます。

ステップ1: 自社の商圏をカバーするDMOを特定する

観光庁の登録DMO一覧から、自社の所在エリアをカバーするDMOを洗い出します。多くの事業者は「地域DMO1件+地域連携DMO1件+広域連携DMO1件」の3階層にカバーされているため、それぞれをリストアップします。

都道府県別にDMOを探す場合は、当社が整理しているインバウンド業界プレイヤーマップで、登録DMOを広域連携/地域連携/地域の3分類とエリアでフィルタリングできます。

ステップ2: 各DMOのサイト・事業報告書を読む

連携先を絞り込む前に、各DMOのサイトで事業報告書・戦略計画書・プロモーション実績を確認します。登録DMOは観光庁に毎年事業報告を提出しており、そのサマリーが公開されているケースも多いです。

読むべき項目は、年間予算規模、主要ターゲット市場(例: 欧米豪/アジア主要国の比率)、主要施策、KPIの達成状況、会員構成の4点です。ここで自社のターゲットと合わないDMOは候補から外します。

ステップ3: 事業者向け窓口に問い合わせる

候補を2〜3に絞ったら、DMOの事業者向け窓口(「会員加入のご案内」「事業者向けサービス」などの名称)に問い合わせます。問い合わせ時に伝えるべき情報は、業態・所在地・ターゲット市場・既存の取り組み実績・連携で実現したいことの5点です。

ステップ4: 商談・事業者向け説明会に参加する

多くのDMOは事業者向け説明会・交流会を四半期〜半期に1回程度開催しています。連携を前向きに検討している段階なら、まずこの説明会に足を運び、担当者と顔を合わせるのが近道です。

ステップ5: 入会・共同事業への参加

会員制度があるDMOでは、所定の会費を払って入会します。入会後は、DMOが実施する共同プロモーション、商談会、ファムトリップ(取材招聘)、コンテンツ造成事業などに「参加事業者」として手を挙げていく流れです。手を挙げなければ自動的には巻き込まれない点が重要です。

連携先を選ぶ5つの判断軸

複数のDMOが自社商圏をカバーしているとき、どこと本格的に連携するかを選ぶための判断軸を5つに整理します。

軸1: 対象エリアの一致度

自社の顧客流入経路、送客動線、周遊ルートに対して、DMOの対象エリアがどの程度フィットしているかを見ます。例えば、自社の宿泊客が海外から空港直行ではなく国内他都市を経由して来ている場合、単一市町村の地域DMOよりも広域ルートを設計している地域連携DMOや広域連携DMOのほうが送客貢献度が高くなります。

軸2: ターゲット市場の一致度

DMOによって力を入れている国・地域が異なります。欧米豪インバウンドに強いDMO、東アジア(中国・台湾・韓国・香港)に厚いDMO、東南アジア(シンガポール・マレーシア・インドネシア・タイ)を主戦場とするDMO、MICE(国際会議・報奨旅行)中心のDMOなど多様です。自社が取りたい市場と主戦場が合っているDMOを選びます。

軸3: 実施施策のタイプ

DMOが得意とする施策のタイプにも差があります。海外商談会・BtoB流通重視のDMO、SNS/動画コンテンツによるBtoC誘客に強いDMO、着地型商品造成が中心のDMO、データ分析と地域事業者へのフィードバックに特化したDMOなどです。自社が不足している機能を補えるDMOを優先します。

軸4: 実績・稼働状況

登録DMOでも稼働状況には差があります。会員数の推移、主催イベントの開催頻度、情報発信の更新頻度、自治体以外の収入源比率(自主事業収益の割合)を確認すると、形骸化していないDMOを見分けやすくなります。

軸5: 連携条件・コスト

年会費の金額、共同プロモーション出稿時の追加負担、データ共有の範囲、商談会参加枠の抽選ルールなど、連携条件を詰めます。年会費が高くても共同事業の参加枠が豊富なDMOもあれば、会費は低いが共同事業のたびに追加負担が発生するDMOもあります。トータルコストで比較します。

費用感の実態 — 会費・共同負担・人件費

DMO連携にかかるコストの目安を整理します。これは公開情報や事業者ヒアリングからの相場感で、実際の金額は個別DMOに確認が必要です。

費用項目相場感(年間)備考
個人事業者の年会費1〜3万円小規模宿泊・体験事業者の入会ライン
法人会員の年会費5〜30万円従業員規模・事業規模で階層分けされる
賛助会員(大口)50〜300万円地銀・大手宿泊チェーン・鉄道事業者クラス
共同プロモ出稿5〜50万円/回海外広告・SNSキャンペーンへの掲載料
商談会参加3〜15万円/回海外バイヤー招聘商談会のブース料
ファムトリップ負担宿泊提供+αで数万円取材受入の実費負担分

加えて、連携実務を担う自社側の人件費(担当者月数時間〜十数時間)も織り込んでおく必要があります。「会費だけ払って放置」では何も起きないので、情報を取りに行き、共同事業に手を挙げる人を決めるところまで含めた総コストで見積もります。

うまくいかないケースと対策

DMO連携が期待どおりに進まないケースには、いくつかのパターンがあります。入口で回避できる要素が多いので、対策もセットで押さえておきます。

情報非対称による連携の形骸化

会員になったものの、共同事業の情報が自社に届かず、気づいたら期限切れというケースです。DMO側は会員向けメールマガジンやニュースレターで情報を流していますが、事業者側の受信・周知体制ができていないと埋もれます。対策は、DMO情報を受信する専任者を1名決め、共同事業の募集を月次で棚卸しする運用を入れることです。

成果測定の欠如

DMO共同プロモに参加したものの、自社への送客効果が計測できないケースです。予約チャネル別の流入経路を把握できていないと、DMO経由の効果を切り出せません。対策としては、OTAの予約データ、Webサイトのリファラー、直接予約時のアンケートなどを組み合わせ、DMO関連キャンペーンの効果を切り分ける計測設計を、連携開始時に組み込んでおくことです。地域特性を踏まえたマーケティング戦略の全体像はローカルマーケティング戦略の立て方と施策設計も合わせてご覧ください。

予算合意の不足

共同プロモに参加するたびに追加負担を求められ、想定よりコストが膨らむケースです。入口の年会費だけでなく、年間の共同事業で発生しうる追加負担の上限、費用分担ルール、対象事業者の優先順位(会員階層による参加枠の差)を入会前に明文化してもらうのが対策です。

ターゲット市場の不一致

連携後に、DMOが力を入れている国・地域と自社が取りたい顧客層がずれていたと気づくケースです。これは連携前のリサーチ不足が原因なので、ステップ2の事業報告書読み込みを省略しないことが最善の対策です。

事業者ネットワークに参加しない

会員にはなったが、他事業者との交流会や商談会に足を運ばず、ネットワークが育たないケースです。DMO連携の価値の半分はネットワークなので、年に最低2〜3回は交流・商談の場に出向く想定で運用してください。

担当者の退職で関係が途切れる

DMO側の担当者、もしくは自社側の担当者が異動・退職し、築いた関係性がリセットされるケースも頻発します。DMOは人材流動が比較的多い組織でもあります。対策は、DMO担当者との連絡記録を社内CRMに残し、複数名で情報共有する体制を取ることです。属人化すると、担当交代のたびに「初めまして」から始める羽目になります。

連携チェックリスト

連携開始前・開始後に自問するチェックリストを用意しておくと、運用の質が安定します。

タイミングチェック項目
入会前事業報告書を最新年度分まで読んだか
入会前自社が取りたい市場とDMOの主戦市場が一致しているか
入会前年会費+想定共同事業費の年間総コストを見積もったか
入会前社内で連携担当者を1名決めたか
入会直後メルマガ・募集通知の受信体制を整備したか
入会直後DMO担当者と初回面談を済ませたか
半年後共同事業に最低1回参加したか
半年後DMO経由の送客効果を計測できる設計ができているか
1年後翌年の会員階層・連携施策を見直したか

連携事例のパターン — 宿泊・体験・自治体

最後に、連携の型を3パターン整理します。自社の業態がどれに近いかで、連携相手と施策の優先度が変わります。

パターンA: 宿泊事業者 × 広域DMO

海外富裕層・長期滞在客を取りたい宿泊事業者が、広域連携DMOと組むパターンです。広域DMOの海外商談会に出展し、ラグジュアリー系OTAやインバウンド専門エージェントとの商談を通じて、個別送客ルートを構築します。共同プロモでは「地域の代表宿」として紹介されることを狙い、露出と予約導線の両面で効果を得ます。

パターンB: 体験事業者 × 地域DMO

農業体験・工芸・アウトドアアクティビティなど着地型コンテンツを持つ事業者が、地域DMOと組むパターンです。地域DMOが造成する地域周遊ツアーのメニューに組み込んでもらい、OTAの体験予約プラットフォーム(Viator・KlookなどのグローバルOTA)への共同登録で露出を広げます。単独でOTA登録しても埋もれるため、DMO経由の代理店登録を優先するケースが多いです。

パターンC: 自治体・観光協会 × 地域連携DMO

自治体観光担当者が、複数市町村を束ねる地域連携DMOと組むパターンです。単独自治体では難しい広域ルート設計・多言語対応・データ収集を、地域連携DMOに集約し、自治体側は補助金拠出・広報支援・事業者調整を担う役割分担が定石です。域内事業者への事業者説明会や海外研修派遣を、DMOとの共催で実施するケースが増えています。

パターンD: 飲食・小売事業者 × 地域DMO

地方の飲食店・土産物店・小売店が、地域DMOの多言語マップ・免税店紹介・クーポン連携に参加するパターンです。単独の発信力は弱くても、DMOの観光案内所で配布される多言語マップやデジタルサイネージに掲載されることで、面で認知を取りにいけます。免税対応や決済インフラのシェア加入も、地域DMO経由のほうが導入コストを抑えやすい傾向があります。

パターンE: 交通事業者 × 広域+地域連携DMO

鉄道・バス・タクシー・レンタカー事業者が、広域連携DMOと地域連携DMOの両方と組むパターンです。広域連携DMOでは地方ブロック単位の周遊パス造成、地域連携DMOでは圏域内の二次交通整備、というように目的を分けて連携します。交通事業者はインバウンド動線の要なので、DMO側からも強く連携を求められるポジションです。

連携を始めた後の運用リズム

連携開始後の運用リズムを決めておくと、形骸化を防げます。目安として、次のような頻度感を参考にしてください。

頻度アクション
週次DMOからのメルマガ・募集情報の確認
月次共同事業の募集スケジュール棚卸し、参加申込
四半期DMO事業者向け説明会・交流会への参加
半期自社の連携成果レビュー、DMO担当との個別面談
年次連携継続/見直し判断、会員階層変更の検討

半期面談では、自社の送客実績、DMO経由と特定できた効果、追加で取り組みたい施策、改善要望をDMO担当者に直接伝えます。この継続対話があるかどうかで、翌年以降に声がかかる共同事業の量が変わります。

業態別のロードマップ — 1年目に何をするか

連携1年目の優先度は業態で変わります。業態別に「1年目でやること」「2〜3年目で積み上げること」を整理します。

宿泊事業者(年商1〜10億円規模)のロードマップ

1年目は、1件の地域DMO/地域連携DMOに入会し、共同プロモ出稿を2回、海外商談会を1回経験することを目標にします。並行して、自社サイトの多言語対応(英語・中国語繁体字・韓国語の3言語最低限)、OTA登録(Booking.com・Expedia・Agoda)の整備を進めます。

2〜3年目は、広域連携DMOへの会員拡張、海外エージェント個別商談、富裕層向けラグジュアリーOTA登録(Mr & Mrs Smith・Tablet Hotelsなど)、インフルエンサー招聘の受け入れにステップアップします。

体験事業者(農業体験・工芸・アクティビティ)のロードマップ

1年目は、地域DMOに入会し、DMOが造成する着地型ツアーのメニュー登録を完了させることが最優先です。並行して、グローバル体験OTA(Viator・Klook・GetYourGuide)への登録を進め、DMO経由で代理店登録が可能な場合は優先します。

2〜3年目は、地域連携DMOへの拡張、旅行会社の素材採用、メディア掲載を通じてブランド化を狙います。体験コンテンツは単価を上げやすい領域なので、量より質を重視した運用に切り替えます。

飲食・小売事業者のロードマップ

1年目は、地域DMOの事業者名簿への登録、多言語メニュー・多言語POP整備、免税対応の導入を並行して進めます。DMOが発行する多言語観光マップ・クーポンへの掲載を狙い、観光案内所での露出を確保します。

2〜3年目は、地域連携DMOの着地型商品への組み込み、旅行雑誌・ガイドブック掲載、SNSでの多言語発信強化と進みます。飲食・小売は立地が強く効くので、DMOの観光案内動線上で露出し続ける設計が有効です。

交通事業者のロードマップ

1年目は、地域連携DMOと広域連携DMOの両方に会員登録し、周遊パス・フリーパスへの組み込みを進めます。多言語アナウンス・多言語券売機・多言語案内窓口の整備も並行します。

2〜3年目は、海外OTAとの連携販売、レール+バス+宿泊のパッケージ商品化、MaaSプラットフォームへの参画など、ソリューション化の方向に進みます。

自治体観光担当のロードマップ

1年目は、対象エリアをカバーする地域連携DMO・地域DMOとの連携協定締結、事業者への連携説明会開催、補助金活用設計の3点に絞ります。自治体側が旗を振らないと域内事業者の参加意欲が上がらないので、首長レベルのコミットメントを得ることも重要です。

2〜3年目は、DMOとの年次共同事業計画の策定、データ連携プラットフォームの共同構築、広域連携DMOへの参画を進めます。単独自治体でできることには限界があるので、広域連携に寄せていくのが中長期の方向性です。

まとめ — DMO連携は「媒体」ではなく「場」として使う

DMO連携をメディア出稿と同じ感覚で捉えると、会費だけ払って放置され、効果がわからないまま解約、という結末になりがちです。DMOは出稿媒体ではなく、地域の観光事業者が集まる「場」です。場に入ったうえで、自社から情報を取りに行き、共同事業に手を挙げ、他事業者とネットワークを作り、DMO担当者と継続対話する運用を組んで初めて、広域プロモーションの便乗効果、データアクセス、事業者ネットワーク、ブランド露出という価値が返ってきます。

最初から完璧を目指さず、まずは自社商圏をカバーするDMOを3つ洗い出し、事業報告書を読み、1件に絞って入会してみるところから始めるのが現実的なスタートラインです。


DMO連携のご相談はローカルマーケティングパートナーズへ

自治体・観光事業者のインバウンド戦略設計から、DMOとの連携設計、施策実行まで伴走型で支援します。まずは無料でご相談ください。

無料相談はこちら

よくある質問

Q. DMOと連携するのに費用はかかりますか?

A. 会員制度を設けているDMOでは年会費が発生します。相場は個人会員で年1〜3万円、法人会員で年5〜30万円が中心帯です。登録DMOとの共同プロモーション出稿には別途負担金が発生するケースもあり、事前に費用内訳を確認してください。

Q. 登録DMOに加盟していない事業者でも連携できますか?

A. 連携可能です。会員でなくても、DMOが主催する事業者向けセミナー・商談会・データ共有会は参加できる場合があります。まずはDMOの事業者向けページから問い合わせ、自社の取り組み内容とエリアを伝えてみるのが入口になります。

Q. 地域DMOと地域連携DMOのどちらに相談すべきですか?

A. 自社の対象商圏で判断します。単一市町村で完結する事業は地域DMO、複数自治体にまたがる周遊促進や広域送客を狙うなら地域連携DMOが適しています。両方が重なるエリアでは、双方に打診して連携の温度感を比較するのが現実的です。

Author / Supervisor

山本 貴大

監修

山本 貴大

代表取締役 / 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ

マーケティング支援の実務経験を活かし、BtoB/BtoCの戦略設計から施策実行まで150件超のプロジェクトを統括。地場の店舗ビジネスからスタートアップ、上場企業まで、現場に入り込んで再現性あるマーケティングを構築する。セミナー支援では企画・運営・登壇まで一気通貫で手がける。

LinkedIn

BtoBマーケの立ち上げ・強化を検討中の方へ

リード獲得から商談化まで、御社に合った施策を設計します

150件超の支援実績 / 初回相談無料 / NDA対応可