クリニック開業時の集患マーケティング|開院前から患者を集める施策設計
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クリニック開業時の集患マーケティング|開院前から患者を集める施策設計

執筆: ローカルマーケティングパートナーズ 編集部

監修: 山本 貴大

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帝国データバンクによると、2024年の医療機関倒産は過去最多を更新しました。クリニックの開業は増え続けている一方で、集患に失敗して早期に経営難に陥るケースも増えています。

  • 開院3ヶ月前からのマーケティング開始が鉄則。プレサイトの早期公開でSEO効果を先行させる
  • 開業半年は集患:増患=6:4で新規獲得に重点を置き、安定期からリピート・紹介にシフト
  • 内覧会はクリニック経営における数少ない直接的マーケティング手法。院内の雰囲気と医師の人柄を伝えられる
  • 立地で7割が決まる。Webマーケティングの前に、診療圏分析に基づく立地選定が最重要

この記事では、クリニック開業時の集患マーケティングを開院前の準備段階から時系列で解説します。

開業前のマーケティングスケジュール

時期施策
6ヶ月前診療圏分析、競合調査、ターゲット設定、ブランドコンセプト策定
3ヶ月前プレサイト(ティザーサイト)公開、GBPの開設、SNSアカウント開設
2ヶ月前本サイト公開、SEOコンテンツ追加、内覧会の企画
1ヶ月前リスティング広告開始、内覧会告知ポスティング、地域医療機関への挨拶回り
開院当日内覧会開催、LINE公式の友だち追加促進
開院後1〜3ヶ月口コミ獲得、MEO最適化強化、患者体験の改善
開院後6ヶ月〜集患比率を徐々に下げ、増患(リピート・紹介)にシフト

開院3ヶ月前のプレサイト公開が特に重要です。Googleがサイトをインデックスし、検索結果に表示されるまでには一定の期間がかかります。開院日にサイトを公開しても、検索からの流入が始まるのは1〜2ヶ月後になってしまいます。

開業準備は物件契約・内装工事・医療機器の選定・スタッフ採用など多岐にわたりますが、マーケティングは後回しにされがちです。「内装工事が終わったらホームページを作ろう」では遅すぎます。6ヶ月前の段階でマーケティングの全体スケジュールを策定し、各施策の担当者とスケジュールを確定させてください。

診療圏分析と立地選定

クリニック経営では「立地で7割が決まる」と言われるほど、立地選定は重要です。どれだけWebマーケティングに力を入れても、診療圏に見込み患者が少なければ集患数には限界があります。

診療圏分析の基本

診療圏分析では、開業候補地の半径500m〜2km圏内の人口、年齢構成、競合クリニックの数と診療科目を調査します。内科であれば半径1km圏内の人口が2万人以上、競合が3院以下という条件が一つの目安です。

  • 商圏人口(住民基本台帳や国勢調査データから取得可能)
  • 年齢構成(小児科なら0〜14歳人口、内科なら高齢者比率が特に重要)
  • 昼間人口と夜間人口の差(オフィス街か住宅街かで患者の来院パターンが変わる)
  • 交通手段(駅からの距離、バス路線、駐車場の有無)
  • 競合クリニックの診療科目、開業年数、口コミ評価

立地タイプ別の特徴

立地タイプメリットデメリット向いている診療科
駅前(徒歩3分以内)通勤・通学途中の受診が多い、認知度が高い賃料が高い、駐車場確保が困難内科、皮膚科、心療内科
住宅街(幹線道路沿い)駐車場を確保しやすい、長期通院の患者が定着視認性が低い場合がある小児科、整形外科、耳鼻咽喉科
医療モール他科との連携、集客の相乗効果自由度が低い、テナント料が割高全般(特に新規開業向き)
ロードサイド看板効果が大きい、駐車場が広い公共交通でのアクセスが悪い眼科、歯科、整形外科

立地が決まったら、その立地の強みを活かすマーケティング戦略を組み立てます。駅前であれば通勤帰りの受診を想定した平日夜の診療時間延長をアピールし、住宅街であればファミリー層への訴求を強化するといった具合です。

プレサイトと本サイトの設計

プレサイトは最小限の情報で構いません。クリニック名、開院予定日、診療科目、所在地、医師のプロフィールを掲載し、「地域名 + 診療科目」で検索された際にインデックスされるようにします。

プレサイトに掲載する情報

プレサイトは5ページ程度のシンプルな構成で十分です。トップページにクリニック名と開院予定日、診療科目の一覧と簡単な説明、医師の顔写真・経歴・専門領域、所在地の地図と最寄り駅からのアクセス、そして開院後の予約方法(準備中でも「Web予約を導入予定」と記載)を盛り込みます。

重要なのは、titleタグとdescriptionタグに「地域名+診療科目」のキーワードを含めることです。「渋谷区 内科 | ○○クリニック 2026年○月開院予定」のような形式で設定します。

本サイトの構成

本サイトは開院2ヶ月前を目安に公開し、以下のページを整備します。

  • トップページではクリニックのコンセプトと主な診療科目を概説する
  • 診療内容ページは疾患別・症状別に分けて作成する。1ページ1疾患の構成が理想で、「渋谷 花粉症 治療」「渋谷 糖尿病 検査」のようなキーワードで個別に上位表示を狙う
  • 医師紹介ページには経歴、専門分野、取得資格、患者へのメッセージを掲載する。顔写真は白衣を着用した笑顔の写真を使い、親しみやすさと信頼感を両立させる
  • アクセスページにはGoogleマップの埋め込み、最寄り駅からの徒歩ルート、駐車場情報を載せる
  • Web予約は開院時点で導入し、24時間予約受付が可能な状態にする

ホームページ制作の詳細は、クリニックのホームページ設計でも解説しています。

MEO対策の早期開始

「地域名 + 診療科目」「駅名 + クリニック」で検索すると、検索結果の上部にGoogleマップのローカルパックが表示されます。ここに表示されるかどうかが、特に保険診療の集患を大きく左右します。

開院前のGBP設定

GBPは開院前の段階でも「近日開業」のステータスで登録可能です。開院前から以下の情報を充実させておけば、開院日に「開業済み」に切り替えた時点で検索結果に表示されます。

  • クリニック名(正式名称で登録。「医療法人○○」は不要、患者が検索する名称にする)
  • 住所(建物名・階数まで正確に入力)
  • 電話番号(開院前は転送設定にしておく)
  • 診療時間(曜日ごとの診療時間、休診日)
  • 診療科目(メインカテゴリ+サブカテゴリを複数設定)
  • 院内写真(内装工事完了後に撮影し、待合室・診察室・受付の写真を10枚以上登録)

開院後の口コミ獲得

開院後は口コミの獲得が最優先です。初期の来院患者に丁寧な診療を提供し、口コミ投稿をお願いする仕組みを用意してください。

具体的には、会計時に「お手数ですがGoogleで口コミをいただけると、クリニック運営の参考になります」と声をかけ、QRコード付きのカードを渡す方法が一般的です。口コミ件数が10件を超えるとGoogleマップでの表示が安定し始め、30件を超えると他のクリニックとの差別化が明確になります。

開院3ヶ月以内に口コミ20件を目標に設定し、患者とのコミュニケーションの中で自然にお願いする体制を作ってください。

MEOの実務については、Googleビジネスプロフィールの設定ガイドMEOの順位決定要因で詳しく解説しています。

内覧会の企画と集客

クリニックの内覧会は、医療広告ガイドラインの制約を比較的受けにくいイベント告知として実施できます。開院1週間前の土日に開催するのが一般的です。

内覧会の告知と配布計画

内覧会のポスティングは開院2週間前から商圏内(半径1〜2km)に配布します。チラシには開院日、診療科目、内覧会の日時、院長の写真と経歴、所在地の地図を掲載します。

配布部数の目安は、内科・小児科の場合で1万〜2万枚(半径1〜1.5km圏内の全戸配布)です。配布は地域のポスティング業者に依頼し、1枚3〜5円が相場なので、1万枚で3〜5万円の費用です。

マンション中心のエリアではポスティング不可の物件も多いため、その場合は近隣の薬局、スーパー、飲食店にチラシの設置をお願いするのも有効です。

内覧会当日の運営

内覧会当日は、以下の要素を盛り込んで地域住民との直接的な接点を作ります。

  • 院内の自由見学(待合室、診察室、検査室などを開放)
  • 医師による健康相談コーナー(10分程度の個別相談を受け付ける)
  • 院内設備の説明(導入した医療機器の紹介、院内の感染対策など)
  • 子ども連れの家族向けにキッズスペースの案内
  • 来場者アンケート(地域の健康課題や医療ニーズの把握に活用)

来場者にはLINE公式の友だち追加を促し、開院後のリマインド配信に繋げます。「開院日に初診でいらしていただくと待ち時間が少なくてご案内できます」といった来院動機を提示すると、内覧会来場者の初診率が上がります。

来場目標は100〜200名が一般的で、そのうち10〜20%が開院後1ヶ月以内に来院するのが平均的な転換率です。

Web広告の立ち上げ

MEO対策やSEOの効果が出るまでには3〜6ヶ月かかります。その間のつなぎとして、リスティング広告(Google広告)が有効です。

キーワードと予算設計

「地域名 + 診療科目」(例: 渋谷 内科、横浜 皮膚科)のキーワードで広告を出稿し、検索結果の上部に表示させます。

キーワードカテゴリクリック単価の目安優先度
地域名+診療科目「渋谷 内科」「横浜 皮膚科」300〜800円最優先
駅名+クリニック「渋谷駅 クリニック」200〜500円
症状名+地域名「花粉症 渋谷」「ニキビ治療 横浜」150〜400円
診療メニュー+地域名「健康診断 渋谷」「予防接種 横浜」100〜300円

月額10〜20万円の予算で開始し、開院直後の来院数を底上げします。広告のランディングページは診療科目ごとの詳細ページに設定し、Web予約への導線を明確に配置してください。

広告費の段階的な最適化

MEO対策が安定し、自然検索からの流入が増えてきたら、広告予算を段階的に減らしていきます。開院後6ヶ月を目安に、広告費を半減できる状態が理想です。

ただし、自費診療メニュー(美容皮膚科、審美歯科、AGA治療など)がある場合は、リスティング広告を継続した方が費用対効果が高いケースもあります。保険診療はMEOとSEOで集患し、自費診療はリスティング広告で集患する、という使い分けが現実的です。

広告運用の基礎はリスティング広告の基礎知識で、地域広告の活用法はGoogleローカル広告で解説しています。

地域医療連携

クリニックの安定経営には、地域の医療機関からの紹介患者が欠かせません。開業後1年を超えると、新規患者の20〜30%が他院からの紹介で来院するクリニックも珍しくありません。

挨拶回りの実務

開院1ヶ月前から近隣の病院・クリニック・薬局への挨拶回りを行います。持参するものは、開院案内の挨拶状、自院の診療案内リーフレット、紹介状の送付先情報(FAX番号、メールアドレス)です。

挨拶回りの範囲は半径2〜3km以内の医療機関が目安です。同一診療科は競合になりますが、紹介・被紹介の関係を築ける可能性は十分にあります。たとえば内科の新規開業であれば、近隣の外科クリニックに「術後の経過観察や生活習慣病の管理を引き受けます」と伝えることで、紹介のハードルが下がります。

連携先との関係維持

挨拶回りで関係を作っただけでは不十分です。紹介患者の診療後は必ず返書(紹介元への報告書)を送付し、経過や治療方針を共有してください。返書を丁寧に書くクリニックには、継続的に患者が紹介されます。

地域の医師会や勉強会への参加も重要です。開業したばかりの時期は積極的に顔を出し、地域の医療者と接点を増やしてください。

集患から増患への移行設計

開業後の集患・増患バランスはフェーズによって変わります。

フェーズ集患(新規):増患(リピート)重点施策マーケティング予算の目安
開業〜半年6:4Web広告、MEO、内覧会効果の継続月20〜40万円
半年〜1年3:7口コミ獲得、患者体験改善、LINE活用月10〜20万円
1年以降(成熟期)2:8紹介中心、地域連携の深化月5〜15万円

増患の鍵は「患者体験の質」

増患の鍵は、患者が「またここに来たい」と思う体験を提供することです。受付対応の丁寧さ、待ち時間の管理(目安時間の事前告知、順番管理システムの導入)、診療の説明のわかりやすさ、院内の清潔感といった日常の積み重ねが口コミとリピートに直結します。

具体的な取り組みとして、予約システムの導入で待ち時間を削減する(平均待ち時間30分→15分を目標にする)、診療後に「お大事にしてください」だけでなく治療の経過や次回の目安を伝える、院内アンケートを月1回実施し改善点を洗い出す、といった施策があります。

外部に向けた情報発信と同じくらい、内部の患者体験を磨くことが重要です。診療科目別の集患施策は、内科の集患マーケティング皮膚科の集患マーケティングで詳しく取り上げています。

医療広告ガイドラインの遵守

クリニックのWebマーケティングでは、医療広告ガイドラインの遵守が必須です。2018年の改正でWebサイトも広告規制の対象に含まれたため、ホームページの記載内容にも注意が必要です。

主な規制内容と具体例

規制項目NG例OK例
誇大広告の禁止「地域No.1の実績」「最先端の治療」「○○学会認定専門医が担当」「年間手術件数○件」
比較優良広告の禁止「他院よりも痛みが少ない」「麻酔を使用し痛みに配慮した治療」
患者の体験談「完治しました!」(体験談のみの掲載)体験談+治療効果に個人差がある旨の明記
ビフォーアフター写真写真のみの掲載治療内容、費用、リスク・副作用の併記が必須
虚偽広告の禁止「100%治療可能」具体的な治療法と効果の説明

自費診療のLP制作での注意点

特に美容皮膚科、審美歯科、AGA治療などの自費診療でLPを制作する際は、以下の点に注意してください。

  • 施術名、施術の説明、費用、治療期間、リスク・副作用を必ず記載する
  • 「○○万人が選んだ」「満足度○%」といった統計データを使う場合は、調査方法・調査期間・調査対象を明記する
  • 「今だけ限定」「本日中のご予約で割引」といった過度な誘引表現は避ける
  • 未承認医薬品や未承認医療機器を使用する施術は、その旨を明記する

ガイドラインに違反すると行政指導や是正命令の対象になります。広告・LP制作時は必ずガイドラインを確認し、不安な場合は医療広告に詳しい専門家に相談してください。

クリニック全般のマーケティング設計はクリニックの集患マーケティングで、美容系の施策は美容クリニックのSEO対策で解説しています。

開業後の安定集客に欠かせないSEO対策は店舗のSEO対策ガイドで解説しています。

よくある質問

Q. クリニック開業前からマーケティングは必要ですか?

A. はい、開院3ヶ月前からのプレサイト公開が推奨されます。ホームページがGoogle検索に反映されるまでに時間がかかるため、開院日に合わせて検索からの流入を得るには早期のサイト公開が必要です。

Q. 集患と増患の予算配分はどうすべきですか?

A. 開業から半年は集患:増患=6:4が目安です。安定期は3:7、成熟期は2:8に移行し、紹介による自然流入を増やしていきます。

Q. 内覧会は開催すべきですか?

A. 開業時の内覧会は最も効果的な直接的マーケティング手法です。ポスティングで告知でき、医療広告ガイドラインの制約を受けにくいイベントです。

Q. 開業後のWeb広告はいつから始めるべきですか?

A. 開院1ヶ月前からリスティング広告を開始し、開院直後の来院数を確保するのが理想です。月額10〜20万円で地域名+診療科目のキーワードを狙います。

Author / Supervisor

山本 貴大

監修

山本 貴大

代表取締役 / 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ

マーケティング支援の実務経験を活かし、BtoB/BtoCの戦略設計から施策実行まで150件超のプロジェクトを統括。地場の店舗ビジネスからスタートアップ、上場企業まで、現場に入り込んで再現性あるマーケティングを構築する。セミナー支援では企画・運営・登壇まで一気通貫で手がける。

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